【工藤会脱税容疑事件】大組織の上納金60億円、任意団体の課税

◆一等地に豪邸、高級車
 白書では、上位に集まった資金について触れており、「暴力団内部の維持、運営に要する資金あるいは組長等上位の地位にある暴力団員自らの生活費や遊興費、他の暴力団の祝事、弔事等の際に支払われる祝儀金、香典等として使われることになる」としている。

 さらに加えて「このように暴力団内部において下から上へ資金が流れる仕組みが形成された結果、組長等上位の地位にある構成員は、自ら検挙される危険を冒してまで資金獲得のための犯罪を敢行する必要がなくなったことから、これらの者の検挙が困難になっている。大規模暴力団の組長等は、一等地に豪邸を構え、また、高級外車を保有するなど、一般市民からは不自然と思われるようなぜいたくな生活を送っているが、これは、この仕組みに負うところが大きいのである」と説明している。

 つまり、この上納システムで親が儲かって、豪邸、高級車の保有をしていることを、警察庁も認識していることになる。やはり、遅きに失した感がある。

 その上納金だが、納めないとシノギができず、罰則があったり、組織内での立場を失う。組員で定期的な仕事をしているものは、わずか26.4%にすぎず、その業種は建設26.0%、不動産14.1%、露天11.7%、金融10.6%となる。非合法としては、債権取り立て28.1%、みかじめの取り立て13.1%、覚せい剤密売9.8%。賭博8.8%だった。

 暴力団取材も長い全国紙社会部ベテラン記者は「最近はすぐに事件を作ってはガサ入れをし、色々なものを押収していく。かつてはそれでも証拠は簡単に見つからなかった。お金の流れや取引も頭の中で記憶していたり、覚えきれないものは、仲間に覚えさせておいたり、とにかく証拠は残さなかった。ただ、現代は、特にシノギが難しくなっており、上層部のこうした蓄財に不満を持っている若手たちもいます。そうした面で一枚岩とは言い切れない部分があったり、裏の経済と表の経済がつながってしまっているため、完璧に証拠を消し去ることは難しくなっている」という。

 同種の事件化は今後も出てくるだろう。


平成26年警察白書概要より

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