トヨタ種類株AAが、上限5000億円に対して申し込みが大きく超えた模様であることが、市場関係者の話でわかった。これにより、単独主幹事の野村HDは手数料量収入225億円以上を得た。また、米通信社ブルームバーグも、野村HDの新規口座開設が、トヨタ種類株AAのおかげもあり昨年の2倍以上になっていると伝えている。今後は第2回目の募集があるとされるが、市場関係者からは個人投資家目線では評価する声もある。
市場関係者によると、AA株は野村証券の支店にある程度均等に配分され、これまでの支店への貢献度、つまり取引が大きい富裕層や、長い付き合いの顧客を中心に割り当てられたという。それでも平均的な割り当ては、1人あたり数百株程度だと見られている。これだけ人気化したのは、日本を代表する会社であるトヨタが買取を保証した上で、段階的に配当がアップし5年目以降は2.5%の利回りになるという点が大きいだろう。おまけに議決権もある。
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ただ、その一方で、これまでのメディアの報道ではネガティブな内容も多い。前出の関係者は次のように言う。
「ここまでメディアの報道では、あまり良くない評価が目立ちますね。それは野村さんは営業収益が、トヨタさんは資金と安定した個人株主を得られるとあって双方にとってのみおいしい条件です。野村さんが今後の提案候補を探しているのは容易に想像できますが、報道でコメントしているのは市場関係者が多く、正直やっかみが透けて見えます。ただ、個人投資家にとって良いか悪いかだけで考えればメリットは多いと思います」
今回のことでは、トヨタと野村が勝者であるという認識を関係者らは強く持っているようだ。もちろん、野村側にとっては手数料225億円とは言えども、最低5年間は顧客資金がロックされてしまうため回転ができずに、それも善し悪しだ。ただ、顧客の需要があることが今回のトヨタ種類株AAでわかったこともあり、第2回、第3回と募集が行われると見られ、加えて、トヨタ自動車クラスの規模の企業が同じような資金調達を検討すると見られ、野村が案件獲得に乗り出すことは容易に想像できる。
トヨタ種類株AAの発行については、米国2位の運用資産規模を誇る公的年金カルスターズ(CALSTRS、カリフォルニア州の教職員退職年金基金)も「日本の投資家のみに議決権が付与され、利益を得る株主が選ばれている」と批判のメッセージをサイト上で公表している。同基金は430万株を保有する大株主だが、先の株主総会では発行に反対している。
外国人株主が重視する指標の一つであるROE(自己資本利益率)だが、大和総研のレポートには次のようにある。
今後の金利動向や市場環境は当然わからないし、また、トヨタが5年後に、ここで調達した資金を基にそこまで良い車を作っているのかどうかもわからない。報道はほぼ野村へのやっかみの面もあるが、われわれ個人投資家自身にとっては損か得かという目でしっかり見る必要がある。