米著名ヘッジファンド運用者ケネス・グリフィン氏が率いるシタデル・インベストメントが来年2016年後半にも、新規株式上場(IPO)を計画していることが4日わかった。米WSJの取材に答えたもので、理由は明らかにしていないが注目が集まる。
米ハーバード大1年生の19歳時から27年、46歳となった今年、初めてヘッジファンド運用業界で報酬1位(13億ドル)となったのが、ケネス・グリフィン氏だった。学生寮にトレードルームを作り、在学中にすでに運用資産は1億円を超えるまでになっていたそうで、早熟の天才だった。
問題視されることもある、超高速取引HFT(ハイフリークエンシートレーディング)の代表的存在でもある。一説には米国株式取引の3分の1がシタデル経由だと言われることもあるほど。2008年には大打撃を受けたものの、旗艦ファンドのケンジントン&ウェリントン(マルチストラテジー)は2014年に年率18.3を達成している。2009、10、12年にもそれぞれ20%超の年率リターンを記録した。
そして、上場の話が、WSJの取材で出てきた。しかし、上場目的は明確には語ってはいない。ただ、シタデルは過去2006年には20億ドルの社債を発行しており、また、上場についても話し合いはされてきたという。
過去の同業者の上場では、英マン・グループ、さらには フォートレス、オクジフと大手ヘッジファンドが上場を果たした。どの社も日本でもなじみが深い名前だ。そして、昨年は代表的な米アクティビストのパーシング・スクエア・ホールディングスがアムステルダムに上場を果たしている。パーシングは資金調達をはっきりと明言したが、他は明確ではない。
運用資産総額は日本年で約3兆円と巨大な組織となっており、新たな資金調達の必要性は感じられない。個人資産も55億ドル以上保有している。一つの可能性には、離婚係争中のディアズ夫人との財産分与などの資金を作るためとの憶測もあるが、これについては明確に「ビジネスはビジネスだ」と否定している。
ただ、業界盟主としての信用を補完したいのではないか、とも見られる。というのも、母校ハーバードにも1億5000万ドルを寄付するなど社会貢献にも積極的になっている。また、昨年、ベン・バーナンキ前FRB議長を顧問として招へいしてもいる。業界では過去に、業界の盟主となったポールソン&カンパニーが、同じく元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏を顧問として招へいしたこともあった。HFTが市場で忌み嫌われる存在でもあり、信用補完をしたいとの意味合いはありそうだ。
ちなみに、前出のフォートレス、オクジフは上場が2007年。サブプライムショック時の前だが、相場の潮目の目印となるのか。