中国経済をめぐる先行きの警戒感から、株式市場で上海総合指数、NYダウや東京株式市場などでも大幅な下落が続いている。2011年後半以降4割以上も下落中だった金が動き出しているが、すでに引退した著名ヘッジファンドマネージャー、スタンレー・ドラッケンミラー氏が投資資産の20%以上、金額にして300億円以上を金ETFのスパイダー・ゴールドに投資し、再び注目を浴びている。
6月には5000ポイントを超えていた中国・上海総合指数も2000ポイント以上の下げ。米国株式市場も、ダウ平均は連日の下落で15871.28ドルに。東京市場でも25日の日経平均株価は一時は500円以上の下げに見舞われた。
そんな中で、スタンレー・ドラッケンミラー氏が、今年第2四半期(4~6月期)に、金ETFのスパイダー・ゴールド・トラストを288万株(時価3億2362万ドル)購入していることが、SEC(米証券取引委員会)に届け出たファイルで明らかになっている。
ドラッケンミラー氏はソロス・ファンドマネジメント時代の1992年には、イングランド銀行を相手に100億ポンドの売りを浴びせて豪快に勝利したことで名をはせた。独立後は自身のヘッジファンド運用会社デュケーヌ・キャピタルでも、平均して年利30%以上のリターンを継続的に叩き出してきた不世出の天才だったが、2010年に第一線から引退した。現在は、自身のファミリーオフィスの資金の運用と、講演活動、社会貢献活動を行っている。
2001年から長期上昇トレンドに入った金。2008年のリーマンショック後には、各国の金融緩和政策とペーパー資産への警戒感からさらに上昇速度を上げ、2011年8月にNY金先物市場で、1オンス=1800ドルを突破し史上最高値を更新した。それからは下落しピークから4割以上の下落が続いてきたが、今年の7月に入ってから下げ止まり反転している。
◆保有上位5銘柄
スパイダー・ゴールド 3億2362万ドル
フェイスブック 1億6061万ドル
ウエルスファーゴ 9444万ドル
ライオンデルバセル 7421万ドル
ハリバートン 6662万ドル
ドラッケンミラー氏は、中国の株価上昇と経済成長には疑問を呈しており、また、再三にわたって公の場でFRBの政策を批判してきたことでも知られていた。ただ、金相場についての公式な発言はなく、真意は測りかねる。
前回、スパイダーゴールドの取引履歴は、2012年第1四半期(1~3月期)に遡る。この時は現在よりも多く、530万株(時価8億5923万ドル)だった。ただ、現在の方がポートフォリオ中に占める割合が高くなっており、株式市場に対する懐疑的な見方は十分に伝わってくる。
ちなみに2012年は年内にすべて売却し利確しているが、今回はどうか。また、他にはポールソン&カンパニーが金ETFの割合を1割程度減らしているが、まだ金への軸足は残すなどしている。