株式市場のボラティリティが大きくなってきたことで、ヘッジファンドへの投資を巡って、また新しい動きが出てきたようだ。全米最大の公的年金基金カルパース(米カリフォルニア州職員退職基金)が約4000億円のヘッジファンド投資の引き揚げを決めたのが昨年9月。その一方で、今度は2位のカルスターズ(カリフォルニア州教職員退職年金基金、CALSTRS)が、運用資産総額の12%にあたる、約200億ドル(約2兆4000億円)を長期債券とヘッジファンドに振り向ける方針を固めた模様だという。下落を想定した局面に入ったこの動きは、他の公的年金や機関投資家にも影響を与えそうだ。
運用資産総額約1910億ドルのカルスターズは全米2位の規模を誇る公的年金基金。米LAタイムズなど
地元メディアが伝えたところによると、同基金が海外株式を中心に運用資産の12%にあたる約200億ドルを長期債券やヘッジファンドに振り向ける方針を固め、下落を想定した局面に入ったようだ。最終決定は11月になるという。
2009年から約6年続いているNYダウの持続的な上昇は史上最高値を超え、1万8000ドルを突破してから今夏、1万6000ドル台に急落している。日々、下落と上昇を激しく繰り返すようになり、ボラティリティは上がっている。そうした市場環境の中での方針の転換となる。
前回の大暴落、2008年9月のリーマンショックを教訓に、カルスターズは2010年に今後5年間の中期計画を発表している。その中にはより多様化することを明言しており、プライベートエクイティにも10%の資金を振り向けるなど、以前よりも多様性が増してきていた。ただ、皮肉にも株式市場が絶好調で、パフォーマンスもそれに連動するかのように回復局面の恩恵を受けた。下図は米コンサルティング会社ウィルシャー・トラスト・ユニバース・コンパリゾン・サービスがまとめた92の米公的退職年金基金の総資産額だが、昨年までに約6割も増加していることがわかる。各年金とも多様性も効果を生んだが、やはり株式市場の回復はこの上なく大きかった。

カルスターズのここ3年のパフォーマンスは年平均12.3%、5年で12.1%、10年で7.0%、20年で7.8%とどれも優秀なもの。特にここ3年間は優れたものとなった。
株式全体で全ポートフォリオ中の約57%を占めるまでになっている。日本のトヨタ自動車の大株主でもあり、トヨタ種類株AAの発行においては反対意見を表明するなど、存在感を示す機関投資家でもある。その保有株式の中でも最大のものは、米アップル株で1700万株以上。次いで、マイクロソフト株2319万株以上、エクソンモービル株1176万株以上をそれぞれ保有する。
ちなみにこれは今年6月30日時点のものだが、アップル株の時価は21億3706万ドルだった。それが9月3日終値時点では18億8055万ドルとなっている。アップル株だけでも、わずか2カ月程度の短期間で、2億5000万ドル以上(約298億円)の損失を出していることになる。

