成功報酬よりも手数料収入を重視する傾向になりつつあったヘッジファンド業界だが、運用成績次第という条件付きではあるが、手数料を投資家に払い戻すというヘッジファンド運用会社が現れた。業界に新しい風を吹かせるのではないか、との期待も集めている。
米WSJによると、このヘッジファンド運用会社はAdage Capital Management(アダージ・キャピタル・マネジメント)。ファンドの運用成績が、ベンチマークであるS&P500を下回った場合に払い戻しが行われるという。
アダージの報酬体系は年間手数料が資産の0.5%、成功報酬が同20%となる。手数料0.5%は業界水準でもひじょうに良心的であるとも言えるだろう。
アダージの代表者2人は、ハーバード大学の基金運用会社であるハーバード・マネジメント・カンパニーで運用幹部だった。ロバート・アッチソン、フィリップ・グロスの2氏だ。運用資産総額は280億ドルで、2010年に投資家347人から、113億ドルを集めて立ち上げており、4年で2倍以上の運用益を出していることになる。ファンド組成時期が米国株式市場の回復期にあたる幸運もあったが、パフォーマンスでも投資家に報いていることになる。
アダージの現在の主な保有株式は次のとおり。
アップル 135万株 5億9900万ドル
ハニーウェル・インターナショナル 645万株 4億8600万ドル
エクソンモービル 532万株 4億7900万ドル
フィリップモリス 455万株 4億2100万ドル
GE 1799万株 4億1600万ドル
ポタシュ 1010万株 3億9600万ドル
コカコーラ 951万株 3億8400万ドル
シェブロン 274万株 3億2100万ドル
IBM 150万株 3億2100万ドル
MS 1086万株 3億1000万ドル
ハーバードマネジメントでは、運用担当者がハーバード大学長の報酬を超えることは当たり前でもあり、数十億円を受け取る。安定を捨てて、より高見を目指してヘッジファンド運用会社を立ち上げた2人だが、業界に一石を投じることになるか。