高級老人ホームは届け出、無届合わせて全国に1万件以上あるとされる。その中でも入居一時金が数千万円、あるいは1億円超えという高級有料老人ホームがある。東京都内で代表的な施設や、入居にあたっての注意点や選び方について調べてみた。メディア露出では、高額な料金や高級な施設にスポットがあたることが多いものの、少し違った角度から観察することで、お金だけがすべてではないことも見えてくる。
◆チャーミング・スクエア芦屋の惨劇
現在、届け出がある有料老人ホームは全国に約9900施設(厚労省調べ)。サービス競争はさらに激しくなっており、今年9月までの老人福祉・介護事業の倒産件数は45件で、過去最高のペースとなっている。事業者間の競争激化の上に、2015年度の介護報酬改定が減額となったことで、今後は倒産がさらに増えていきそうだ。
富裕層向けの施設でも、高ければ良いということではなく、逆にメディア露出がなくて費用が安くてもしっかりとした施設もある、ということは知っておかなくてはならない。最初にお金ではないとは言ったが、まずは数千万円をドブに捨てないための注意をしなければならない。
総工費150億円以上、入居一時金が約1億円のプランもあった「チャーミングスクエア芦屋」は、メディアに大きく取り上げられ話題となった。しかし、入居率は三分の一にも満たず、税金の滞納から行政から差し押さえを喰らい、また、オーナー会社が高額な一時金を得るためのスキームであることも後に判明している。もちろん、芦屋なのに富裕層が住む山手ではなく海手に立地し、バリアフリーを無視したタワーだったなど突っ込みどころがあったのだが。
この象徴的な有料高級老人ホームの破綻劇は、入居者の高額な一時金はすべてが守られたわけではない。その後は平成18年4月以降にできた施設については一時金のうち500万円は返還しなくてはならなくなったが、やはりお金のリスクは伴うものだと覚悟はしておかなくてはならない。