相続時の上場株式評価を見直しへ 株高演出か?

 金融庁は、上場株式の相続時の評価について見直しを行うことを、平成28年度税制改正で新たに要望することになった。上場株式は現行では、不動産、さらにはタワーマンションなどと比べて、相続時の税制上は不利。改正が実現すれば、相続メリットが生まれることによって、さらに株式市場に富裕層や資産家の資金が流れ込む可能性もある。

 要望の内容としては「投資家の資産選択をゆがめることがないよう、上場株式等の相続税評価の見直しを行うこと」としている。

 まず、上場株式は相続と贈与の場合で異なり、それぞれ評価額決定日が次のようになる。

・相続 被相続人の死亡の日の最終価格
・贈与 相続人が財産を取得した日最終価格

 ただ、課税時期の最終価格が、次のうち最も低い価格を超える場合は、その最も低い価格で評価する。

・課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
・課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
・課税時期の月の2カ月前の毎日の最終価格の平均額

 さらには納税手続きまでにタイムラグも発生し、仮にその間に株価の変動が大きい場合も有利・不利が出る可能性もある。金融庁も施策の必要性として「不動産等と比較して価格変動リスクの高い金融商品であるが、相続税の評価においては、原則として相続時点の時価が評価され、相続時から納付期限までの期間(10カ月間)の価格変動リスクは考慮されていない」と説明している。

 一般的に相続ではいかに評価減を取ることができるかが重視され、最近では効果が高いとして、タワーマンション節税が幅を利かせてきた。土地評価額と建物取引価格との間で生じる価格差を生かした節税策で、土地に対して高額になる高層階は評価減を取りやすくなるために、資産の圧縮が可能となる。さらには賃貸マンション用途にして、小規模宅地特例などを用いることなどによって最大で8割程度の資産圧縮も可能だった。

 しかも売却する際には、購入時と同程度かそれ以上の価格で売却できることも多く、かなり効果的な相続&投資だった。

 しかし、国税庁が相続対策としてのタワーマンション節税に監視を強化していく方針を明らかにしており、今後はあからさまな例には厳しく取り締まることになりそうだ。ある意味で、アメとムチということになるのか、あるいは、株式市場への資金流入を狙うということになるのか?

 これ以外にも、上場株式の相場によっても評価額が影響を受ける非上場株式の相続評価についても配慮することを要望している。こちらは経済産業省が要望しているもので、中小企業に配慮をしたもの。

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