租税条約「自動情報交換」27万件実施 隠し口座情報も世界に筒抜け?

 国税庁は、平成26事務年度(昨年7月~今年6月)に租税条約に基づく情報交換をした実績を発表し、要請件数は526件で、前年の720件からは減少した。ただ、27年度からは順次、自動的に金融機関の口座情報や所得情報などが他国と自動的に交換されるため、すでに約27万件以上の自動的情報交換を行ったことも明らかになっており、着々と準備が進んでいることがわかる。

 件数自体は減少しているものの、実際には11月1日時点で93の国と地域との間で条約が締結されているために、準備はここ数年で段階的に行ってきたものと思われる。その「自動情報交換」と呼ばれるシステムで取り扱われる情報としては、法定調書などから把握した配当、不動産所得、無形資産の使用料、給与・報酬、キャピタルゲインなどに関するものだという。

 また、施工にあたっての実施細目(コメンタリー)は次のようになる。
1 自国に所在する金融機関から非居住者が保有する金融口座の口座残高、利子・配当など年間受取総額の情報を受ける。
2 租税条約の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対し、情報提供する。

 日本の国税庁もこの規定に対応するために、国内各金融機関から口座保有者の個人情報を報告させている。平成29年1月から施行され、同30年4月30日までに国内金融機関からの報告があがってくるという。

 一方で、ゆかしメディアでも以前に◆参考:海外隠し口座がバレる? スイスPBから日本の富裕層に「不幸の手紙」として報道したが、スイスにとっての非居住者にも、PBなどの金融機関から個人情報を確認する書類が富裕層らの手元に届いている。各金融機関は国税当局からの指示の下で行っており、準備は進みつつある。情報交換によって判明した例としては次のようなものがある。

◆国税庁が海外当局に要請した例
 法人税で、日本国内法人が、他国Aの法人からの輸入取引を行い、同国の個人に手数料を支払ったが、役務提供の事実確認ができなかった。そのためA国に情報交換要請を行ったところ、架空手数料であることが判明した。

◆自動情報交換を活用した例
 海外国税当局から入手した資料で、日本の居住者で海外金融機関からの受取利子があるものの、申告されておらず課税した。

 実際にはかなりの個人情報の捕捉が進んでいるということになる。

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