利回り世界一「IT株の虎」が「VCの虎」に変貌中

 過去、運用利回り世界一にもなった米著名ヘッジファンド運用会社タイガーグローバルマネージメントがベンチャーキャピタル(VC)としても存在感を増している。米国拠点企業向けVCファンドとしては資金規模2位となる95億ドル(1兆1670億円)の大きな資金力を持ち、民泊仲介サービス「Airbnb」などに出資している。アップル、アマゾン、フェースブックなどIT株投資を得意とする虎が、VCファンドとして牙をむき始めた。他にもサードポイント、バイキンググローバルなどの名うての運用会社もVCの一面を持つ。

 英調査会社プレキンによると、タイガーグローバルは米国拠点企業にフォーカスしたVCファンドの額では、ニュー・エンタープライズ・アソシエイツに次いで2位となる95億ドル。さらには、いわゆるすぐに使うことができる手元資金のドライパウダーは、46億ドルで1位となっている。単に良い案件がないのか、あるいは吟味して今後に投資余力を残しているのかはわからないものの、今後さらなるリターンを生んでいく余地もある。

 タイガーグローバルは2011年のヘッジファンド業界のリターンランキングで45%を記録して1位に輝いたこともある。創業者チェース・コールマン氏は当時36歳の若さで業界1位となり、また、昨年の業界報酬ランキング(フォーブス版)では、11位で3.8億ドル。また、同社ナンバー2のフェルツ・デュワン氏が18位で2億ドルだった。

 コールマン氏は、ヘッジファンド創世記の著名運用会社タイガーマネジメント出身者で、同社出身者らしからぬIT銘柄の投資を大得意とする。2011年のリターンで名をあげると、上場前から保有していたフェースブック株も上場後は大きなリターンを叩きだすなど、いわゆるユニコーンを探す時流に乗り始めた。

 同社の最近の主なVCファンドには次のようなものがある。

・タイガーグローバルパフォーマンス  約31億ドル 2014年~
・タイガーグローバルプライベートインベストメントパートナーズ  25億ドル 2015年~
・タイガーグローバルロングオポチュニティーズ 約6億ドル 2014年~

 15億ドルを調達しているAirbnbにもタイガーグローバルは名前を連ねている。また、調査レポートでは触れられていないものの、同社はインド、中国のITスタートアップ企業の出資にも熱心に取り組んでいる。他では、ソフトバンクも出資するソーシャルファイナンスには、サードポイントが出資している。ヤフーやサザビーズなどを追い込み、日本ではソニーで利益を上げて、ファナックには大幅増配を引き出した

◆2015年第1四半期~第3四半期の主なイグジット(社名、ファンド規模、イグジット規模)

1 オースペック・ファーマシューティカルズ 8700万ドル ⇒ 32億ドル

2 リンダドットコム            2億8900万ドル ⇒ 15億ドル

3 フラクサスバイオサイエンシーズ     3800万ドル ⇒ 12億5000万ドル

4 バーチュストリーム           1億3000万ドル ⇒ 12億ドル

5 ハイペリオンセラピューティクス     1億5300万ドル ⇒ 11億ドル
 
 VC全体のイグジット時期としては、2014年にいったんピークを迎えた模様だが、タイガーグローバルは新興市場もターゲットに入れており、もう少し先を見ているようでもある。この先のリターンに期待しよう。

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