文京区の億ション「ル・サンク小石川後楽園」が、東京都建築確認審査会から建築確認処分を取り消す裁決が出され、このたび、デベロッパーが購入者と契約を打ち切ったことがわかった。地下駐車場の避難階段が設けられていないなどで東京都のお条例違反があった。文京区の中心部に位置しながも良好な環境面からも人気が高く、最高価格2億円以上のプランもあったが全戸完売となっていた。12月末に竣工予定、来年2月入居開始予定という竣工目前にしてのマンション建設の執行停止は異例のこと。
まず、行政が一度はおろした許可を覆すという点、さらにはそれが、竣工が目前の完売している億ションであるという点で二つの異例の出来事が起きたことになる。
都審査会の書面などによると、2003年に該当する土地をデベロッパーが買い入れて、行政から2004年8月に建築確認を得た。ただ、計画が容積率いっぱいの建設だったために住民が反対し、2005年に都審査会は建築確認を取り消し。2009年には再び開発許可が出た。ただ、住民側は2010年に東京地裁に開発許可取り消しを求めて提訴するが、主張は認められていない。
しかし、住民側は高さ制限などを理由に都審査会に申し立てをし、今年10月には執行停止を決定。11月には許可自体を取り消した。都審査会の決定としては、避難階としていた地下駐車場と1階住居部分は、前面の傾斜道路の傾斜スロープを活かしたもので避難階段がないとして、避難階には該当しないと判断した。
デベロッパーは購入者に対して説明会を開いているが、今後の具体的な計画は示されていない。許可が取り消される原因となった部分を手を加えるということも、全戸完売となり竣工直前の今からはできないだろう。また、訴訟を提起するなど法的な手続きを行っても時間がかかりすぎる。建築確認申請を最初から行った上で取り壊してから新たに建て直すか、あるいは手付金の2倍以上の返金措置などが考えられる。
先に問題が発覚した、三井不動産レジデンシャルの「パークシティーLaLa 横浜」では虚偽データに基づいて工事が行われ、耐震性に問題があるとして、金銭的な補てんをした上で今後の対応を住民側と協議している。今回のル・サンク小石川後楽園の場合は、パークシティとは経緯や条件などは大きく異なっているが、億ションでも結果として、このようなケースになり得ることを示してしまった。