米国財務省は13日、NYマンハッタンとマイアミの価格500万ドル以上の高級コンドミニアムの本当のオーナーを調査することを発表した。実はマンハッタンに限れば500万ドル以上の物件オーナー名義がペーパーカンパニーである割合は44%にも上る。こうした実態を踏まえながら、脱税や版材資金のマネーロンダリングなどの疑いもあると見て調査を行っていくという。
One57、15セントラルパーク、タイムワーナーセンターをはじめ、米NYのマンハッタンには、1戸あたりの分譲価格が数十億円、あるいは中には100億円超のものまで数多くの高級コンドミニアムが存在する。著名ヘッジファンドマネージャーのケン・グリフイン氏、ビル・アックマン氏らがメディアで名乗り出たこともあるが、名乗り出ないかぎりは誰がオーナーかはわからない。
銀行借り入れもすることなく現金一括払い。契約でも本人は顔を見せることなく、代理人や、サイナーたちが代行する。登記された住所地にはオーナーは存在せず、署名は別人物、本当のオーナーの姿を探ることはひじょうに難しい。これまで各種報道では、中東の王族ファミリーやアジア各国の首脳の名前なども出てきたこともあるが、実際にはわかりかねる。米国は最も栄えている大国でありながら、企業からも個人からも税金が取れないという矛盾を抱えてもいる。
このたび財務省が把握に積極的に乗り出すようになった。同省の執行機関である「financial crimes enforcement network」ディレクターのジェニファー・カルバリー氏は、「何年もの間、脱税やマネーロンダリングの温床になっている。米国不動産が、国境を超えた犯罪者たちの投資である可能性も把握しなければならない」としている。
不動産調査会社シティリアルティのレポートによると、直近1カ月では、平均単価が190万ドルから220万ドルまで上昇したという。単価が上昇し続けているために、成約件数は下げ基調となっている。
これは米国だけにかぎらず、英国でも同様の問題を抱えている。ロンドン警察がロンドン市内の高級住宅街の物件を調査したところ、オフショア籍の会社名義などの割合が約50%に上ったという。リビアの故カダフィ大佐のロンドンの豪邸は名義が「キャピターナ・シーズ」というオフショア籍の会社になっていたともいう。
こうした問題は東京など日本国内でも、すでに億ションはオフショア籍のペーパーカンパニー名義の登記は存在しており、いずれ問題として顕在化する可能性もある。