ヘッジファンドの戦略別となる2015年12月月次と、年間リターンがクレディ・スイスから発表され、空売り専門のショートバイアス戦略が4.80%と高リターンを上げたことがわかった。年間で見れば、株式ロング&ショート、マルチストラテジーが健闘した。ここ3年ほど好成績のグレンビューキャピタルと、センベストマネージメントなど株式ロング&ショートを主戦略とするヘッジファンド運用会社が今年も注目を集めることになるか。
クレディスイスによると、ヘッジファンド全体の戦略平均指数であるCSヘッジファンドインデックスは、昨年2015年の12月月次が-0.85%で、年平均で-0.71%となった。8月の中国株式市場の大幅な下げなど不安定な相場で、上げ相場のトレンドが転換したかのような年でもあった。そんな難しい環境でも株式ロング&ショート、マルチストラテジーが安定していた。
◆戦略別平均リターン 12月月次 年平均
コンバーチブルアービトラージ -0.78% 0.81%
ショートバイアス 4.80% 2.38%
エマージングマーケット -0.21% -0.22%
エクイティニュートラル 1.60% 1.69%
イベントドリブン -1.30% -6.29%
ディストレス -0.71% -5.30%
マルチストラテジー -1.54% -6.67%
リスクアービトラージ 1.31% 0.42%
フィクスドインカムアービトラージ 0.15% 0.59%
グローバルマクロ -2.05% 0.18%
株式ロング&ショート -0.01% 3.55%
マネージドフューチャーズ -2.19% -0.93%
マルチストラテジー 0.21% 3.84%
株式ロング&ショート、マルチと比較的にバランス型の戦略が良好な傾向にあるようで、その傾向はあまり変わりそうにない。米投資専門誌バロンズが発表している、2012~14年の3年平均によるヘッジファンドベスト100では、1位はグレンビューキャピタル社のグレンビューオフショアオポチュニティーで、57.05%、2位はセンベストパートナーズの43.54%だった。
◆直近3年平均リターンランキング(ファンド名、3年平均、ファンド資産額)
1 グレンビューオフショアオポチュニティー 57.05% 33.3億ドル
2 センベストパートナーズ 43.54% 7.05億ドル
3 マーリンLP 41.63% 7.68億ドル
4 カモックス 36.45% 3.11億ドル
5 ヒルデーンオポチュニティーズマスター 34.49% 13.36億ドル
6 アルセントラストラクチャードクレジット 33.12% 3.21億ドル
7 タイガーラタン 31.38% 7.50億ドル
8 ナピアパークヨーロピアンクレジット 30.52% 4.03億ドル
9 チャナバリ 30.01% 5.17億ドル
10 ボロリッチトレーディング 29.25% 8.11億ドル
グレンビューは13、14年と同ランキング2年連続1位に。創業者ラリー・ロビンス氏は、30代の時に、ヘルスケア銘柄、病院銘柄に集中投資を行うようになった。米国は90年代から医療費抑制は歴代政権の懸案事項になっていたものの、なかなか手を付けることができずにいた。ロビンス氏は先読みし、ヘルスケア政策関連銘柄へと長期投資の仕込みを行い、大きな運用益を得ている。グレンビュー全社の運用資産総額も1兆円を突破しており、14年の自身の年俸は23億ドルだった。
2位のセンベストパートナーズは1~3年の間で、株価2倍、3倍のポテンシャルを持つ株式を狙う。創業者リチャード・マーシャル氏がブルームバーグ・マーケッツの取材に語ったもので、ボラティリティが高いものを積極的に狙いに行く。元々は非公開株を扱っていたが、公開株の方が情報バイアスが入るために割安になるという判断で、公開株に。また、運用資産額の大半を自身とファミリーの資産で運用しているという。年率平均で20%以上のパフォーマンスを現在も保っている。
3位のマスター・キャピタル・マネージメントのマ-リンLPは、米著名投資家ウィルバー・ロス氏の片腕でもあったマイケル・マスターズ氏が創業。株式ロング&ショートを主戦略とし、他にコモディティ投資も行う。