ヘッジファンドダイレクト社長に聞く「ヘッジファンドに投資しているのは誰か?」

 2017年11月、債務超過となった東芝に投資をしたのは、ヘッジファンド達だった。
 今回の東芝に限らず、これまでも多くのヘッジファンドが日本企業に投資をしてきた。ソニー、西武ホールディングス、任天堂など、その数は多数に上る。

「モノ言う株主」と呼ばれた村上ファンドの元社員が立ち上げたヘッジファンドが、東芝の株を3万2000以上保有することを決定するなど、投資の世界において「ヘッジファンド」の存在感は増している。

 投資家の間でもヘッジファンドに関する関心が高まっている一方、イメージのみが先行した、間違った情報も数多く流れている。果たして、ヘッジファンドに投資をしている投資家は本当に儲かっているのか。

 そこで、ヘッジファンド投資に詳しく『富裕層のNO.1投資戦略』(総合法令出版)著者の高岡壮一郎氏に聞いた。

高岡壮一郎
三井物産株式会社でM&A・新規事業開発に従事後、2005年にあゆみトラスト グループを創業。ゆかしウェルスメディア株式会社、ヘッジファンドダイレクト株式会社等のグループ各社の代表取締役社長を務める。フィンテック領域にて富裕層向け金融事業・メディア事業を行う。海外で証券会社を経営する等、グローバル金融の経験を有する。ロイター・ウェルスマネジメント・サミット、日経BP金融ITイノベーションフォーラムに登壇。著書に『富裕層のNO.1投資戦略』(総合法令出版)、評伝に『起業家2.0』(佐々木俊尚著 小学館)。ヘッジファンドダイレクト株式会社は、海外ヘッジファンドを専門とする投資助言会社として、日本国内の富裕層顧客を中心に中立的な立場から各種ヘッジファンドに関する分析・助言を行っている。

-ヘッジファンドというと、ハイリスク・ハイリターンを狙う危なっかしいファンドのイメージがあります。

高岡:それは昔の話で、今は真逆だ。現在、ヘッジファンドに投資をしているのは、ハーバード大学基金や年金基金などの著名な機関投資家だ。運用に失敗してはいけないお金を預かる機関投資家であるからこそヘッジファンドに投資し、長期的に低リスク・高リターンを求める投資マネーが次々とヘッジファンドに集まっている。
ヘッジファンドを他のアセットクラスと比較すれば、ヘッジファンドという投資対象が低リスク・高リターンであることは明白だ。

アセットクラスごとのリスク・リターン実績表。世界株や日本株等の伝統的アセットに比べ、ヘッジファンドは相対的に低リスク・高リターンであることがわかる。

-ヘッジファンドはアクティブファンドの中でも優秀なファンドだとは思いますが、結局はインデックスファンドには勝てないと言われています。

その通り。巷の多くのアクティブファンドは高い手数料を取りながらも、低コストのインデックスにすら運用成績で勝てない。例えば日本で販売されているロングオンリーの投資信託がそうだ。

アクティブファンドの運用者として名声を高めたウォーレン・バフェットは、「平均点狙いのインデックス等での分散投資は思考停止に過ぎない」と喝破する一方で、そろそろ引退する今となっては「投資素人の一般の人はインデックスに投資するのが良い」とも主張している。つまり、「自分(バフェット)のような天才以外は、自分で売買する投資なんかに手をしても無駄」とバフェットは語っているわけだが、この本質に気がついただろうか?

だからこそ、インデックスよりもパフォーマンスが良い「天才が運用するファンド」に厳選して投資するべきだろう。例えば、私が経営しているヘッジファンドダイレクトが助言対象としている某ヘッジファンドは、世界株インデックスと比較して、コスト控除後で見て、非常にパフォーマンスが良い。そういったヘッジファンドに投資をしないのであれば、わざわざアクティブファンドを選ぶメリットはないだろう。

ヘッジファンドダイレクト社が投資助言対象としているヘッジファンドAと世界株との比較チャート。20年間の運用機関でのヘッジファンドAのパフォーマンスは世界株インデックスを大きく上回っており、トータルリターンに圧倒的な差がついていることがわかる。

-ポートフォリオの一部をヘッジファンドに振り分けるといいということでしょうか?

そうだ。例えばハーバード大学基金などもポートフォリオの一部にヘッジファンドを振り向けている。

ハーバード大学基金のポートフォリオ例。株式や債券等の伝統的アセットだけでなく、16%の配分でヘッジファンドにも投資している。これにより、リーマン・ショックのようにあらゆるアセットが同時に下落する局面においても、逆にリターンを狙えるヘッジファンドの存在によって資産を保全できるような合理的なポートフォリオを実現している。

リーマンショックのような世界的金融危機が起こると、アセットの分散投資をしていたとしても、株式も債券も不動産もコモディティもすべて値下がりしてしまう。だからこそ、これらの資産と相関性の低いアセットであるところのヘッジファンドをポートフォリオの一部に加えることが合理的だと考える機関投資家が増えている。

結果として、リーマンショック以降、ヘッジファンドへの投資額が世界的に増えていった経緯がある。

Hedge Fund Researchのデータによると、ヘッジファンドへの投資額は年々増加傾向にある。ヘッジファンドダイレクト社の投資助言サービスも、2008年の創業以来、富裕層を中心に支持を伸ばしているとのこと。

-個人でもヘッジファンドに投資できるのでしょうか?

ヘッジファンドダイレクトのようなヘッジファンド専門の投資助言会社や、外資系証券会社のプライベートバンク部門に相談すれば、海外の本物のヘッジファンドへの投資機会を得ることができる。
国内大手金融機関では、それらの海外ヘッジファンドを国内投資信託形式としてリパッケージして販売しているところもある。リパッケージされている分、コストが割高なので、可能であれば、直接本物に投資する方が手取りリターンは高くなる。

-投資をするとしたら、どんなヘッジファンドを選べばいいでしょうか?

市場を予測するのは難しい。だからこそ、不確実な市場を相手にして、着実に勝った実績のあるファンドマネージャーが運用しているファンドに自分の資金を託すのが合理的だ。短期に儲かったファンドではなく、長期的に儲かり続けた運用業者を選別する必要がある。

自分自身で資産運用をしたことがあるだろうか? 自分の過去実績と比べてみて、それより優れた実績を有する運用者に任せると良いだろう。

-ヘッジファンドダイレクト株式会社は、証券会社のようにファンドを売るのではなく、運用会社のように投資家のお金を預かるわけでもない「投資助言会社」とのことですが、どのようなビジネスモデルなのですか?

証券会社と助言会社の違いは例えるならば、マツモトキヨシと医者の違いだ。ドラッグストアーの使命は薬を売ることだ。薬を売って儲ければ良い。
医者は患者からお金をもらう立場で、どんな薬がいいかを中立的に分析して処方する。ヘッジファンドダイレクトは投資助言会社だから、ファンド側から一切広告費や販売手数料等を受け取らない。投資家サイドからのみ手数料を頂戴している。

利益相反に敏感な金融リテラシーが高い顧客からの支持を頂き、投資助言契約額累計はこの分野では日本で第一位だ。

-ヘッジファンドダイレクト株式会社はどのような方法で、顧客の為になるファンドを推奨するのですか?

世界には10万本以上のファンドがある。それをデーターベース化し、独自のアルゴリズムを回して、長期実績があるファンドを客観的に抽出して顧客のニーズに応じて提案している。

結局のところ、金融は数字で判断できる。当社はデータ主義だ。これから儲かります!と主張する新米ファンドマネージャーを、投資助言会社であるヘッジファンドダイレクトは評価していない。10年、20年と金融市場の戦場で生き抜いてきた本物のプロしか、当社の顧客にとっての投資適格だとは思っていないわけだ。

もちろん、これはヘッジファンドダイレクトという独立系の一介の投資助言会社の助言ポリシーであって、その考え方が唯一正しいとか言うつもりは毛頭ない。

ただ私は、世界中のファンド実績データを客観的に見て、より低いリスクで、より高いリターンを、より長期間実現できた本物のファンドだけを投資家に勧めていきたいだけだ。

- 最近は資産運用がブームです。投資をしてはいけないファンドはありますか?

ヘッジファンドに限らず、一般的にファンド全般はそうだが、透明性のある仕組みがあるか? 顧客財産が分別勘定となっているか? 受賞などの第三者からの客観的な評価があるか? 等はまずは基本だ。
その上で、パフォーマンスの分析が必要だ。たまたままぐれで、1年間だけ高リターンを出したようなファンドは、翌年大損するかもしれない。
大きなリスクを取った結果としての一過性のリターンであるとすれば、それは“質が悪い”リターンであると言える。より小さいリスクをテイクした上で大きなリターンを取ることこそが運用業者の腕である。目先の高リターンに惑わされてはいけない。

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