バブル終焉か? 販売不振でハワイ高級コンド分譲を中止 

 日本人富裕層にも人気が高く世界で最も安定した不動産マーケットの一つであるハワイ・ホノルルで、ある高級コンドミニアムが建設中止を発表し、関係者らに衝撃を与えている。現地の大手デベロッパー「Kobayashi Group」などがカカアコ地区で手掛ける共同プロジェクト「Vida at 888 Ala Moana」だが、販売不振とコストの上昇が理由だという。世界でも有数の高級不動産マーケットであるハワイで起きた異変の意味は大きいか?


 「Vida-」は、ホノルルのカカアコ地区に計画されていた地上38階建て(265ユニット)で、価格帯は98万8000ドル~400万ドル。2018年春に竣工予定となっていた。カメハメハ財団が所有しアラモアナ通りに隣接する3.4エーカーの土地が予定地。昨年5月に販売がスタートし、100ユニットが数日で契約済みになったというが、その後は販売が振るわないまま現在にいたっていたという。契約者には、すでに支払われていた手付金を返還したという。

 全体としては、ホノルルのカカアコ地区の再開発プロジェクトの一つであり、全体で20以上のコンドミニアムが計画されるという一大開発でもあった。まさかの販売不振という点では当事者や業界関係者には衝撃を与えたことだろう。

 ハワイ・ホノルルの不動産は、世界でも有数の非弾力性を持つとも言われる。非弾力性とは、開発可能な土地が限られた上に開発は規制されているために、住宅価格の下落が緩やかなのに対して、上昇の脚が早いという傾向を意味する。ここ数年のハワイ不動産当局の統計でも、販売件数の目立った減少や価格下落は確認されていない。ただ、日本人富裕層以上に大きな勢力を形成していた中国人富裕層の買い控えも一つの原因であるとも考えられ、確実に今後は目に見える形になりそうだ。

 このデベロッパーはホノルルの別の開発案件「パークレーン・アラモアナ」も手掛けており、昨年、海外では日本国内で初めて記者会見しているが、同社幹部は「日本人富裕層は新築物件を好む傾向にある」として、需要を見込んでいた。市況が安定している上に、土地よりも建物の比率が多いために減価償却が効果的に使える上に、相続税がないため人気が高い。ただ物件は違うにしても、あてが外れた模様だ。

 さらに、懸念される材料がコストの上昇。この問題は日本国内だけではないようで、海外でも同様のようだ。米国全土で見てもかなりの上昇でここ5年間で約2割も上昇している。「Rider Levett Bucknall」のレポートによると、特に、ホノルルは全米主要都市の中では、昨年7月から10月にかけてのコスト上昇インデックスはNYを追い抜いて1位となっているほどで、物件価格にしわ寄せされることになる。


全米主要都市の建設コスト比較

◆米国建築コスト指数
2010年10月 142.63
2011年10月 145.29
2012年10月 147.74
2013年10月 153.09
2014年10月 161.11
2015年10月 169.05

 さらに、建設業界は不景気だったものの、ハワイをはじめとして大型の建設計画が立て込んでいることもあり、建設業界の失業率は短期間で急激に下がっている。

◆建設業界失業率
2014年第4四半期 8.3%(5.7%)
2015年第1四半期 9.5%(5.6%)
2015年第2四半期 6.3%(5.4%)
2015年第3四半期 5.5%(5.1%)
※()は全体の失業率

 今後は段階的な米国の金利上げも予定されており、これまでのような強気材料はなかなか出てこないだろう。ハワイという世界でも最も手堅い市場で起きた今回の事象は、世界の不動産マーケットの先行きを反映しているのか。

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