ヘッジファンド運用会社の運用開始から2015年末までの通算リターンのランキングが、投資調査会社LCHインベストメンツから発表され、厳しい投資環境だった2015年の運用益だけでも33億ドルをたたき出した、ブリッジ・ウォーター・アソシエイツが運用総益計450億ドル(約5.3兆円)として、1位に返り咲いた。前年1位の大御所ジョージ・ソロス氏のクォンタムエンダウメントファンドは2位に、業界報酬1位んぽデビッド・テッパー氏のアパルーサマネジメントは今年も3位をキープした。昨年唯一の40代でランクインしたビル・アックマン氏のパーシングスクエアキャピタルだが、今年はランク外に沈んだ。
ダリオ氏やブリッジウォーターについての詳しい説明は不要だろうが、業界のありとあらゆるランキングでは1位にならなかったものはない聖人である。これからの投資動向には注目したいところ。マルチストラテジーで運用しているが、読みの確かさは業界でも群を抜いている存在で、2008年のリーマンショック時には、その前にすでにキャッシュポジションを大幅に増やすなどしていた。今後懸念される大きな下振れリスクの中で、どのような投資判断をするのか。
◆通算リターンランキング(運用総額、運用益、2015年運用益、開始年)
1 ブリッジウォーターピュアα 823億ドル 450億ドル 33億ドル 1975年
2 クォンタムエンダウメントファンド 290億ドル 428億ドル 9億ドル 1973年
3 アパルーサ 179億ドル 228億ドル 10億ドル 1993年
4 バウポスト 270億ドル 226億ドル -8億ドル 1983年
5 バイキング 302億ドル 225億ドル 17億ドル 1999年
6 ローンパイン 295億ドル 224億ドル 12億ドル 1996年
7 ポールソン&カンパニー 156億ドル 214億ドル -21億ドル 1994年
8 ポイント72(旧SAC) 114億ドル 197億ドル 17億ドル 1992年
9 エリオットアソシエイツ 269億ドル 185億ドル 5億ドル 1977年
10 ムーアキャピタル 155億ドル 181億ドル 6億ドル 1990年
11 ファラロン 210億ドル 177億ドル 3億ドル 1987年
12 ブレバンハワード 188億ドル 171億ドル -3億ドル 2003年
13 ミレニアム 343億ドル 171億ドル 35億ドル 1989年
14 オクジフ 243億ドル 152億ドル -1億ドル 1994年
15 カクストングローバル 81億ドル 146億ドル 2億ドル 1983年
16 キングストリート 195億ドル 136億ドル -5億ドル 1995年
17 ハイフィールド 126億ドル 126億ドル 6億ドル 1998年
18 マーベリック 105億ドル 120億ドル 11億ドル 1995年
19 ランズドーン 196億ドル 118億ドル 21億ドル 2001年
20 チューダーBVIグローバル 105億ドル 115億ドル 1億ドル 1986年
そのほかで目立つところでは、パーシングスクエアが2015年は一転して運用がマイナスとなったことで、ランク外になった。製薬会社バリアントファーマシューティカルズが他のアクティビストのレポートで急落し、大打撃を喰らった。その直後に3000億円規模のナンピン買いを入れるという緊急措置を取るなどしたが、アクティビスト全体が弱い地合いの中で低迷した。
2000年以降で運用を開始した12位のブレバンハワードも苦戦を強いられた。自動取引全盛にあってマクロファンドが時代の流れに取り残されている地合いも大きく、閉鎖やスピンオフなど組織の見直しを迫られた年であった。
一方で2000年以降組の新しい顔として、ランズドーンが19位に顔を出した。英ロンドンを拠点にする大手ヘッジファンド運用会社で、会社は1998年に設立された。創業者ポール・ラドック氏は2013年に当時54歳の若さで引退。アートの世界に進むことを理由に挙げていたが、現在は美術館のオーナーとなっている。現在は、ピーター・デービス、ジョナサン・レジスの両氏が代わって仕切っている。
株式ロング&ショート戦略で、近年も安定したリターンをあげてきた。昨年も21億ドルの利益を出している。現在保有する銘柄ではアマゾン株を184万株以上保有しており、時価総額ではこれだけで11億ドル以上となっている。含み益で2億ドル程度。株式市場が厳しい環境に向かう中で、2016年はどのような運用を行っていくのか注目されている。