オーストラリアで競馬の障害レースが存続している南オーストラリア州で、州議会に障害レース廃止の法案が提出されたことが、現地の動物愛護団体の発表で明らかになった。人馬の安全面を考慮して世界的に廃止論議で揺れる障害レースだが、日本では馬主の「損失補てん的」な位置付けのレースにもなっており、南半球最大の競馬大国での存否は今後、日本などにも少なからぬ影響を与えそうだ。
障害レースは落馬事故が、平地レースに比べて多いために、人馬の安全の観点からも見直しかいなかの論議がずっと続いてきた。オーストラリアでは障害レースは、ビクトリア州と南オーストラリア州の2州のみが存続しており、実際に廃止となれば、何らかの影響を与えそうだ。
愛護団体によれば、1月31日に州議会に提出したといい、今後審議される。団体は障害レース事故の多数の研究もいっしょに提出しているというが、その中の一つであるメルボルン大学の研究では、障害レースの死亡事故は平地に比べて19倍多いという。
障害レースは英国、アイルランド、フランスなど欧州で盛んに行われており、日本では1日1、2レースのペースで組まれている。
賛否両論があり、馬主の中でも意見は別れており、大橋巨泉氏は早くから廃止を主張してきた。主催するJRAは歴代の理事長によって考え方が異なるようだが、平地レースよりも馬券売上が少ないということもあり、改革は後回しにされている感も強い。
そもそも 障害馬としてのデビューを目的とした生産を牧場は行っておらず、馬主も最初から障害馬としてのデビューを考えている人は皆無。どちらかと言えば、平地で通用しなかった馬の現役寿命を延ばすために、障害の方が手当てが良いために、こちらでひと稼ぎという意味合いは強くなる。ある意味で馬主にとっての損失補てんでもある。
その点を、名門生産牧場の西山牧場(現在は売却)のオーナーブリーダー、西山茂行氏が自身のブログの中で「馬主にとっては障害競走はなくては困る」「障害専門の騎手の生活権の問題が出る。従って、障害競走はなくならない」などと自身の意見を述べている。
ただ、実際に障害レースの存続が危ぶまれるような出来事が日本でも起きている。
2013年1月、京都競馬場開催の牛若丸ジャンプSで落馬事故があり、2騎手がけが。翌日開催の障害競走で、2人が騎乗予定の馬は交代がいなかったために出走を取り消すという事態となった。平地ではありえない話だが、障害の現場では実際にこのような問題が起きている。そのため、JRAが開催番組表の改善などで手を打っているが、日本は人手不足という独特の問題がついて回る。