富裕層40人が知事あてに税率アップ署名

 米ニューヨーク州在住の富裕層40人が連名で21日、所得最上位カテゴリーの州税率アップを求める意見書をアンドリュー・クオモ同知事あてに提出した。低所得者層や非富裕層がNY市街を占拠したかつての「オキュパイ・ウォールストリート」とは異なり、高所得者や富裕層側からのアクションであり、一定の社会的インパクトはありそう。

 「ビジネス、投資のために長期的な安定や成長を求めて、企業がインフラや人材に投資していますが、それは州の行政とて同じこと。われわれは限界税率よりも、さらに納税余力がある」

 リベラル系の税制シンクタンクのタックス・ファウンデーションが公表したデータによると、総所得に占める税金の割合が全米でもっとも高い州はNY州(州税、地方税あわせて)で12.6%だった。近年ではこの税率を嫌って、8.9%と低いフロリダ州、さらにはタックスヘイブンであるプエルトリコなどに移る動きも富裕層の中には見られた。

 州政府は公共企業体なども含めて、電力、公共交通などのインフラ関連、医療関連、教育関連など多岐にわたる行政サービスを提供している。累積する債務は合わせて2000億ドル以上もあり財政赤字は深刻で、クオモ知事は就任後に州職員の給与凍結1年間を検討し労組に申し入れたこともあった。もちろん、NY州だけではなく50州のうち半分以上の州は財政破綻危機に瀕しているとも言われており、実際にカリフォルニア州の当時のアーノルド・シュワルチェネッガー知事が財政非常事態宣言を行ったのが2009年だった。そして2013年には、ミシガン州デトロイト市が地方土地では過去最大規模の財政破たんとなったことは記憶に新しい。

 各自治体ともに予算が潤沢ではない中で、インフラの老朽化や住民の貧困が進み、提案書では「いくつかの市街地では、子供の貧困が50%を超えているし、また州内には8万人という記録的なホームレスがいる」としている。治安の悪化や子供の教育現場の退廃を招くなどの懸念もあり、NY州のためにも高所得者の税率をアップするべきだとの主張を展開する。

 40人のメッセージでは、NY州の上位1%の平均的な年収は約200万ドルとケタ違いだが、他の99%が4万7300ドルだという。また、NY市、州、全米ともすべて、上位1%が占める経済的な割合が上昇しており、NY市で39.0%に、NY州で30.2%、全米で21.2%になっているという。

 それでも、年収60万ドル以上の実行税率は8.1%と他のカテゴリーよりも低くなっており、ここに調整の余地があるとしている。そこで、66万5000ドル未満の層に関しては現行のままにして、66万5000ドル以上の層に増税を行うというプランを示した(下図参照)。例えば1億ドル以上であれば、8.82%から1.17%プラスして9.99%にするなど、それぞれ1%前後の増税を提案している。



 そして、この増税提案によって増えるNY州の税収は約22億ドルで、約17%の税収増になるという。2017年度のNY州の予算案では、20億ドル以上の債務超過になる見通し。これ以降は債務超過を減らすための緊縮予算を組んでいくことになるが、かなり厳しい状況にあることに変わりはない。

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