富裕層が逃げた街ランキング1位パリ7000人

 2015年の1年間で富裕層が最も流出した都市、いわゆる富裕層から見捨てられた街はパリで、7000人が流出していたこことが、ニューワールドウェルスのレポートで明らかになった。パリに次いで、ローマ5000人、シカゴ3000人、アテネ2000人となった。原因は度重なるテロによる治安の悪化と、経済的な機会の無さで、英国や米国に居を求めることが多い傾向にある。


 レポートによると、富裕層の流出が多かった都市はパリ、ローマ、シカゴ、アテネ。 国別では、フランス1万人、中国9000人、イタリア6000人、インド4000人、ギリシャ3000人、ロシア2000人、スペイン2000人、ブラジル2000人だった。

 特に2015年のフランス国内では、パリで1月に報道機関のシャルリー・エブドの銃撃に始まり、11月にはパリ市街地のサッカー場などで起きたテロでは120人以上の死者を出すという大惨事に発展するなど、大きなテロ事件は6件も発生している。昨年は国家非常事態宣言も出るほどの大異変の年だったと言っても過言ではない。80年代から続く経済的な低迷は長期化して格差が拡大する中で、代を経たイスラム系移民の若者たちがテロ行動を起こすという背景が存在する。

 安全はすべての社会基盤の前提になるもので、年間8000万人以上の観光客が訪れるフランスにとっては安全、経済に対する打撃も大きい。そうした考えは富裕層も同じであり、より安全な場所を求めた移転を行ったにすぎない。また、不法移民の流入に悩むアテネも同様で、常に暴発する危険性をはらんでおり、経済的な問題以前に安全面を考えざるを得ない状況だ。

 シカゴも同様で、地元紙シカゴ・トリビューンによると、今年に入ってから1~3月に起きた銃撃事件で141人の死者が出ており、これは前年同期を大きく上回るペースで推移しており、ここ数年で最悪の死者数になると見られている。背景にあるのは、移民などの人種間による対立と、経済的な低迷だという。シカゴの場合は国外に逃げ出すというよりは、西海岸や東海岸の大都市など国内の他の都市に移ることが多いようだ。

 この4都市の中ではローマは経済的な要因だけが挙げられている。またレポートでは富裕層流出で具体的な悪影響を予想している。
・富裕層は最初の脱出者であり、その後の中間層の流出の前触れにもなる
・広い意味で資産が流出する。また、国内での消費もなくなる
・富裕層の40%程度がビジネスオーナーのため雇用にも影響が出てくる
・所得と消費などに関係する納税がなくなる
・高度人材である場合が多く、単純に人材が流出する

 一方で、流入が多い都市は次のようになる。
・シドニー4000人
・メルボルン3000人
・テルアビブ2000人
・ドバイ2000人
・サンフランシスコ2000人
・バンクーバー2000人
・シアトル1000人
・パース1000人

 南半球と米西海岸が一目で人気が高いことがわかる。また、おもしろい点としては、テルアビブは特にフランスから多いと分析されており、イスラエルの他の都市も多いのだという。パリ在住の富裕層にはイスラエル系が多いということか。また、北アフリカの富裕層に人気があるのは、欧米よりドバイだという。

 ICIJによるパナマペーパーの公表により、タックスヘイブン資産が世界を揺るがせているが、いざとなれば海外逃避もあり得るために資産だけでも先に海外に逃避させておくという意味もある。

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