タワーマンション議決権で富裕層が圧倒的有利に

 国土交通省が「マンション管理の適正化に関する指針」の改正案の中で、標準管理規約の項目の一つ「議決権」を資産価値による割合を配分する可能性について言及している。これは一住戸あたり一票が原則だったものが、タワーマンションで最上階や上層階の富裕層たちが有利になるということを意味する。今後、様々な問題をはらむことが予想されるマンション管理で、ある意味で現実的な改正案が示されたことになる。


 国交省の「マンション管理の適正化に関する指針」は、文字通りマンション管理の適正化を推進していくために管理組合や住民ら関係者が留意すべき基本的な必要事項を定めたもの。法的な拘束力や罰則はないものの、一定の指針となるもので、マンション管理の考え方や実務においての根底になる。今回の改正案は高齢化の進行などの課題を見据えて、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長 福井秀夫・政策研究大学院大学教授)が取りまとめた。

 そこで今回の議決権の項目についてだが、端的に言うならば「資産価値で決めよう」ということになる。

 そもそも論として民法252条には、共有物の管理に関する事項が定められており「共有物の管理に関する事項は、
前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる」とある。共有物の保存行為には例外があるとはいうものの、指針の改正案には、これに照らして「新たに建てられるマンションの議決割合について、より適合的な選択肢を示す必要性があると考えられる」としている。

 その議決権の改正案の主な要点は次のとおり。 

◆ 大規模な改修や建て替えなどを行う旨を決定する場合、建て替え前のマンションの専有部分の価値などを考慮して建て替え後の再建マンションの専有部分を配分する場合等における合意形成の円滑化が期待できるといった考え方もある。

◆ 住戸の価値に大きな差がある場合において、単に共用部分の共有持ち分割合によるのではなく、専有部分の階数(眺望、日照等)、方角(日照等)を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を決めることも考えられる。

◆ 価値割合については、必ずしも各戸の実際の販売価格に比例するものではなく、全戸の販売価格が決まっていなくても、各戸の階数、方角などにより、別途基準となる価値を設定し、その価値を基にした議決権割合を建築当初に設定することが想定される。ただし、前方に建物が建築されたことによる眺望の変化などの各住戸の価値に影響を及ぼすような事後的な変化があったとしても、それによる議決権割合の見直しは原則として行われないものとする。

 タワーマンションは階数にほぼ比例して価値、あるいは価格がアップするために上層階の方が議決権割合が多くなるという意味になる。それは、管理費用などの修繕に掛る負担額もほぼ比例しているというところから、来ているようだ。また、その価値に影響を及ぼすような事が起きたとしても、当初の議決権をそのままキープできる点にも触れられている。
 
 ちなみに「ブリリアタワーズ目黒」ノースレジデンスで見てみると、最上階ペントハウスタイプ(150.11平米、4億59000万円)の管理・修繕積立等費用は、一時払いが97万円、毎月払いが6.7万円。スタジオタイプ(30.99平米、4850万円)が同20万円、1.3万円となる。負担額としては最上階が約5倍ということになる。これまでは同じ議決権だったものが、実際にどのような割合の運用となるかはわからないが、平等になるという見方も出来得る。

 上層階の所有者に種類株が付与されるようなものとなり、富裕層のタワーマンション理事会の発言権は強くなるだろう。

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