ヘッジファンド報酬ランキング グリフィン2連覇

 ヘッジファンド業界の2015年分の報酬ランキングが、米専門誌インスティチューショナルインベスターズ(アブソリュートリターン+)から10日発表され、1位は2年連続でシタデルのケネス・グリフィン氏となり、17億ドルだった。同額1位はルネサンステクノロジーズのジェームズ・シモンズ氏。上位25人の報酬総額は100億ドルで前年の116億ドルからさらに減少となっており厳しい環境をうかがわせるが、グリフィン氏は前年から400億ドルの増額だった。アルゴリズムトレードでここ数年注目を集めている2シグマインベストメントの創業者2人が初のトップ10入り、また昨年1位の運用成績を残したファンドを持つパーセプティブアドバーザーズの創業者も初のトップ10入りとなった。
 
 テールリスクが拡大するなど2015年も厳しい運用環境が続いたが、それでもウェリントン、タクティカルトレーディング、グローバルエクイティーズなどのファンドが年率2ケタの好成績をたたき出したシタデルのケネス・グリフィン氏が2連覇を果たした。40歳代にして本拠を置くイリノイ州で最も資産家(75億ドル)でもある。

1 ケネス・グリフィン    17億ドル シタデル
1 ジェームズ・シモンズ   17億ドル ルネッサンステクノロジーズ
3 レイモンド・ダリオ    14億ドル ブリッジツォーターアソシエイツ
3 デビッド・テッパー    14億ドル アパルーサ・マネージメント
5 イスラエル・イングランダー11億ドル ミレニアムマネジメント
6 デビッド・ショー     7.5億ドル DEショーグループ
7 ジョン・オーバーデック  5億ドル  2シグマインベストメント
7 デビッド・シーゲル    5億ドル  2シグマインベストメント
9 アンドレアス・ハルボーセン3.7億ドル バイキンググローバル
10 クリストファー・ホーン  3億ドル  ザチルドレンズインベストメント
10 ジョン・エデルマン    3億ドル  パーセプティブアドバイザーズ

 グリフィン氏は先に発表されたフォーブス版でも17億ドルで1位となっている。シタデルは、同じく同誌が機関投資家が採点した8項目による調査「ヘッジファンドレポートカード」でも4位に入っている。旗艦ファンドのウェリントンをはじめとして複数のファンドが5年連続で2ケタ以上のリターンをあげるなど評価が高く、現在、投資家から最も信頼される運用会社の一つとなっている。ここ数年、ディアス夫人との離婚係争というプライベートでの問題を抱えながら、運用成績は落ちないというのも驚異的でもある。

 近年は年金基金をはじめとして、機関投資家からの手数料、報酬体系など出費についての圧力が強まっている。17億ドルの高額報酬も、こうした環境下においては投資家からの信の厚さを示してもいる。同率1位のシモンズ氏は引退し、ファミリーや従業員向けのファンド運用のみのため、現役のグリフィン氏とは同列には並べにくい。

 また、シタデルは、前FRB議長のバーナンキ氏も上級アドバイザーに就任しており、その理由が同社の進化していく投資戦略に関心があるということだった。業界の盟主は完全にシタデルに移ったようにも見える。

 7位のジョン・オーバーデック、デビッド・シーゲルの両氏は初のランクインとなった。日本での知名度はないに等しいものの、アルゴトレードではかなり知られた存在でもあり、業界内や機関投資家からの信頼も厚かった。ヘッジファンドでも自動化が主流になったことを感じさせ、同社の時代が到来したと言っても良い。

 シーゲル氏は「昔のように人間の意思決定が投資の世界でより良いものとは限らない時代が来る」とも述べてきたが、怖いくらいにそれが現実のものになりつつある。例えば設定来年18%以上の新興国市場投資で著名なネフスキー・キャピタルがファンドの閉鎖を発表したが、マーティン・タイラー氏は自身のマクロ戦略がアルゴリズム主体の時代に合わなくなってきたことを理由に挙げている。

 またさらに、日本でもソニー、セブン&アイHDなどでも知られる大物アクティビストのダニエル・ローブ氏も今年1~3月期書簡で、特定の戦略でバラツキが出てきており業界の崩壊の初期段階にあると書簡で述べるなど、マクロ系、アクティビストなどは将来を見通すことができないような時代に突入したことをはっきりと表している。

 さらに2シグマはノーベル財団が投資資金を入れていることでも知られるが、同財団の財務報告では2014年にさらに投資額を追加したことも公表されている。

 他では10位に入ったジョン・エデルマン氏は、2015年で最も運用成績が良かったファンド、パーセプティブ・ライフサイエンシーズ(51.8%)などを運用するパーセプティブアドバーザーズの創業者。ヘルスケア関連投資に特化した運用会社で、自身が化学業界担当のアナリストとしての活躍した経験を生かして独立し、わずか600万ドルでスタートした運用資産は現在は1兆円を超えている。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる