シンガポールの経済停滞が始まった!?

 アジア金融の重要な拠点の1つであるシンガポールの経済に陰りが見える。
 シンガポールの主要なショッピングモールで空き店舗が目立つようになってきたと、ブルームバーグが伝えている。
 シンガポールの一大ショッピングゾーン、オーチャードロードにはたくさんのモールや髙島屋を始めとした日本のデパートがあり、多くの旅行者を引きつけてきたが、空き店舗の数はここ5年で一番多くなった。この地区の不動産業者は、閉店はさらに増えるだろうと予想しており、賃料も2014年をピークに下落が進む。

 消費が落ち込んでいるのにはいくつも理由があるという。シンガポール人はアジアでトップレベルに通販で物を買う割合が高いという。
「通販が普及したことで、ショッピングモールは今までのあり方を見直す必要に迫られています」
 ARAアセットマネジメントの執行役員、ジョン・リムは言う。ショッピングモールは今後、飲食や娯楽、銀行などの店舗を増やしてファッションや小売は減らす形に変えていく必要があるだろうと、彼は言っている。

 シンガポールに見切りをつけた外国企業も出てきた。シンガポールでマークス&スペンサーやザラを展開するアルフテイムグループは、今年少なくともシンガポールの10店舗を閉鎖する予定だ。同グループは、シンガポールよりもコストの安いマレーシアやインドネシアへの進出を計画している。
 不動産業者のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによると、イギリスのブランドであるニュールック、フランスのセリオも今年の後半に閉店予定だという。

「慎重に検討した結果、シンガポールには私たちが重要と考えるマーケットと同じポテンシャルはないと判断しました」
 ニュールックの担当者はブルームバーグの質問にそう答えた。ニュールックのシンガポール最後の店舗は6月30日に閉じる。


華やかに見えるシンガポールも経済は夜に入ったか。
 かつてのような中国からの「爆買い」も今では期待薄だ。
「中国人旅行者はシンガポールに買い物よりも、旅の体験をしに来ている」

 シンガポールのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの研究所長、クリスティーヌ・リは語った。
「今日のグローバル化した世界では、どこでも同じブランド品を買うことができる。勝ち残るためには差別化が必要だが、残念ながらシンガポールの店にはそれが欠けている」

 国内の消費も低迷したままだ。シンガポールの消費者物価は3月に17カ月連続の下落を記録した。これは最長記録であり、原油価格の下落もだが経済の停滞も反映している。
 もしシンガポール経済にこのまま逆風が吹き続けるようであれば、賃金カットやリストラ等が起こる可能性がある。
 今年、主なショッピングモールの賃料は5%程度低下するだろうと、グローバル不動産サービス会社のコリアーズインターナショナルが伝えている。

 需要が低下している一方で、ショッピングモールの増え続ける供給は賃料と空室にさらなる悪影響を与えることになりそうだ。
 向こう3年間で約37万平方メートルの小売りスペースが増えると、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの発表するデータは語っている。

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