京都に多数残る伝統的な建築物「町家」が現在世界的に注目を集めていると、NHKワールドニュースが報じた。
江戸時代は建物の間口の広さに応じて税金がかかったことから、間口はできるだけ小さく、低層にした建物が多々生まれたとされる(町家の由来については諸説あり)。
町家の多くは明治、大正などの時期に建てられたもので、江戸時代の建造物がそのまま残っているものもあり、京都には2010年現在、約48000軒の町家がある。
町家は京都の街の風景を形作るものとして、非常に注目を集めている。
町家に迫る開発の危機
注目を集めている一方で、町家の所有者が土地や建物を手放してしまうケースが多々ある。
古民家での生活に憧れる人は多いが、実際に暮らすのは簡単なことではない。町家の多くは江戸時代から明治、大正に建てられたものだ。建てられた当時に使い勝手がよいようになっているため、現代の生活には合わなくなっている部分も多い。
また、古い木造の建物は維持・管理が大変だ。傷んでいる部分などは適宜取り換えたり、またメンテナンスする必要もある。
そのままでは使いにくい、改修には費用がかかる、持ち続けるのも維持費がかかり、将来的には相続税も発生する。それらの負担を考えて、町家を手放す人も多くなっており、空き家も目立ってきている。
人が住まなくなった建物は急速に傷んでいく。そして便利で快適かつ維持の手間が少ない近代的な建物に建て替えることを決める人もいる。
古民家の維持は、決して簡単なことではない。
官民のサポート&海外からの問い合わせ
町家の危機を憂えた地元のNPOなどが「町家は京都の風景そのものである」として働きかけ、町家の保護に力を入れている。
具体的なアクションを起こしているのは民間だけではない。京都市は平成12年に「京町家再生プラン」を策定した。
専門家を交えたネットワークで情報を共有するほか、町家の改修時は行政が相談に乗る、人に貸す際は妥当な賃貸契約ができるようアドバイスをしている。
昔の建物は時代に合わなくなり住みにくいところ、使いにくいところもある。
だが地元に根ざした建築会社が、時代に合わせた形のリフォーム等を行うなどしており、現代でも住みやすい形にすることができる。
適切な耐震補強をすれば、現在の建築基準を満たすことは十分に可能だ。
町家のニーズは今や世界中から
町家を所有することに興味のある人がたくさんいる。他県からの問い合わせがあるほか、現在は台湾、シンガポール、アメリカからの問い合わせが増えているといい、その中には大富豪もいる。
自分が住む目的のほかに、改築し宿泊施設に変えるなどを検討しているという。それらの人たち向けに町家の販売情報を英語で発信しているサイトもある。
旅行者が宿泊できる設備の整った町家も増えてきた。
売りに出されている町家の多くは安いもので数百万円から1000万円台の前半で購入でき、用途の幅広さや再建築がどこまでできるか等により値段が変わる。
築100年の町家を購入し、町家に暮らすアメリカ人のサイモン・バウマー氏はNHKの番組に出演し、こう語った。
「町家は実に日本的なものであり、他のどこにもない魅力がある」と。
彼は費用をかけて町家の内部を改築し、現代に暮らしやすい形にした。
「新しい家はいつでも買えるが、新しい町家を建てることはできない。お金をかけて改築する価値がある」