上阪氏は成城のガソリンスタンドの従業員に、こんな話を聞かせてもらったという。バブル期、成城にも時代の寵児のような人たちが超高級な車で乗りつけるようになった。だがバブルが弾けたあと、それらの人はみんなまったく見なくなったそうだ。
「成城の人たちは身なりも決して華美ではありません。これみよがしの流行のブランド物のバッグもほとんど見かけない。無駄に高いものは好まないのだと思います。一方でよいもの、長く使えるものには高いお金を払います」
お金持ち=高級ブランド品のイメージがあるが、お金持ちがそれらを好むのは、ブランドと呼ばれるくらい質のよいものだからだ。
上阪氏は、取材で成城の大豪邸にお邪魔したときのことをこう語る。
「ビックリするくらいものが少ないおうちでした。道具も調度品も、必要最低限という感じで。ただし、どれもとてもいいものでした。
年代は感じさせますが、古くなっている感じがしないのです。本当にいいものを買われたのだろうと思います。『本当のお金持ちの暮しって、きっとこうなんだろうな』と感じました」
“高くても出す部分”と“少なくても出さない部分”のメリハリが利いている
本当のお金持ちは、お金を払うときの基準が“金額”ではない。“払う額に見合っているか”だ。
「成城に、成城石井というスーパーマーケットがあります。今では関西などにもお店がありますが、1号店はその名の通り、成城にあります。以前取材のときに成城石井の社員の方から伺ったのが、『成城石井は、成城のお客様に育てていただいた』という言葉です。
成城の人たちは、いいものを求めている。それは本当においしいものであったり、もしくは安心・安全なものであったり。その質に妥協はしません。同時に、いいものでも価値よりも高ければ買わないのです。
一方で、価値に見合うと思ったら、支払う金額が大きくても買います。成城石井の商品は、安売りスーパーといわれるところよりは値段が張りますが、こだわり抜かれた商品がたくさんあります。それらの商品が「この品質でこの価格だったらむしろ安い」とお金持ちに支持され、非常によく売れているのです。
やはり基準は“払う額に見合うか”なのだ。
「成功者とは“稼ぎ続ける人”と申しましたが、お金持ちもそうなのだと思います。お金が残り続ける人。お金が残るとはすなわち、簡単な話ですがある分よりも使わない。
なぜ使わないか? 充分に満たされていて、お金を使わなくてもいいからです。成功者、勝ち組と世間には呼ばれてもどこか満足できず、散財することでしか満たされないのだとしたら、それは本当の成功者でしょうか?
お金はあってもお金に振り回されることもなく、普通でいられて、幸せを味わえる。本当のお金持ちな人たちは、それが自然とできているように思います」