連載記事「ヘッジファンドとは何か?」の2回目です。
第1回はヘッジファンドとはどのようなものかについて最初の部分の説明をしました。
ヘッジファンドが知られてない理由
前回の記事で、ヘッジファンドがいい投資の商品であるという印象を受けた方も多いと思います。「やっぱりあやしい」と思った方もおられるかもしれません。また、同時にこう思った方はいらっしゃらないでしょうか。
「そんなにいい商品ならば、なぜあまり知られていなくて、ほかの商品のようにたくさん売っていないのか?」
ヘッジファンドには運用に必要なお金の最低額があります。運用のスタートは1億~10億円くらいのことが多いです。
ヘッジファンドは元々が富裕層の巨額のお金を運用する仕組みであり、動かす金額が大きいからこそできる運用をベースとした設定になっています。
そして、お金持ちが自分たちのお金を出してくれさえすれば必要な資金は充分に集まるので、運用する側も多くの人を集める必要がありません。また、参加者が多いほど多くの人の利害を考えて動かなければならなくなるので、どうしても様々な制限がかかってしまいます。参加者は少ないほうが自由度が高くなります。
これらの理由からヘッジファンドを扱う側も、自分たちの情報をあまりオープンにしていないのです。ヘッジファンドに関する情報が多く出回っていないのはそのためです。
ヘッジファンドで資産を運用したいと思ったら、自分で探すしかありません。そのためにも、知識を得て、情報を入手し、それらの情報が役に立つものかどうかを自分で判断できるようにすることが大切です。
自分で行う資産運用、プロに任せる資産運用
ヘッジファンドについて詳しくお伝えする前に、資産運用について簡単に説明します。
資産運用には大きく分けて「自分で運用する形」と「人に運用してもらう形」があります。
値が上がりそうな株や不動産を買い、高くなったあとに売って儲ける、高いときに買った金融商品を安いときに売ったら損をする、それが「自分で運用する形」です。
相場を見ながら、この株や不動産が安いから買う、高くなったから売ると判断していく目やカンが求められます。
個人が運用する場合とプロが運用する場合に、それぞれメリットとデメリットがあります。たとえば個人が運用するとなると、運用に成功すればそのリターンはすべて自分が手にできます。プロは扱わないけれどもいい金融商品を運用することもできます。
日々変動する相場を見ながら売る、買うをすべて自分で判断していくのは大変です。相場を見る目も、様々な判断ができる経験も必要です。仕事をしながら行うのはなかなか苦労します。
また「この株が値上がりしたので儲かった、この不動産が値下がりして損した」というように、運用成績は個別の銘柄による部分が大きくなり、トータルの運用成績は安定しないことが多いです。「1回大損してからは一切投資から手を引いた」という人もいます。
個人の運用で成功するためには、やはりある程度時間も労力も割く必要があるのではないかと思います。
そのデメリットを補う意味でも、投資をすべてプロに任せる形が存在します。運用のプロはお金を出してくれた人に代わって売る、買うを判断していきます。
「人に運用してもらう」ものの代表が投資信託やヘッジファンドです。
プロが代わりに運用するといっても、投資家のお金が100万円あれば100万円だけを運用するわけではありません。プロに運用を頼みたい投資家はたくさんいるので、プロはそれらのお金を集めて、扱えるお金が大きいからできる運用をします。
たとえばボックスティッシュでも1つずつ買うよりも5個セットのほうが1つあたりは安く買えるように、扱う数や量が大きいと得になるものはたくさんあります。
同じように、プロはプロだからできる金額の大きな運用や、プロでなければ扱えない金融商品を取り引きするなどして、投資家に利益をもたらせるようにしていきます。
また、どんな世界もプロでしか知り得ない情報などがたくさんあり、それは投資の世界も同じです。それらの理由から、運用に成功する確率はアマチュアよりも高いと言えるでしょう。
ただし、経験も豊富な専門家であるプロが相場に張り付いているからといって、必ず運用に成功するわけではありません。
市場が予想外の動きをして、大きく儲かることもあれば、大損することもあります。
こればかりは、プロだからといって損をしても責められないところです。市場を完璧に読めれば、誰でも大金持ちになれますから。
とはいえ、アマチュアは運用に失敗しても自分が損して終わりますが、人のお金を預かっているプロは「ごめんなさい」ではすみません。あらゆる手を使って、損をしない方法を考えています。
その方法のひとつが「分散」です。値上がりしそうなものと値下がりしそうなものを同時に買う、この先の伸びは少なそうだが大損もしなそうな先進国の債券と、大きく伸びるかもしれないが大幅下落するかもしれない新興国の債券を同時に買うなどして、市場がどちらに流れても損をしない形をつくっておくのです。
そういったことを常にプロは考えています。そしてプロが動いている限り、そのプロにお金を預けた投資家は、報酬を支払う必要があります。
また、プロはプロでやっている以上「今はお休み」ということはありません。アマチュア投資家は「今は状況が読めないので、しばらく売買はしない」というように「相場を休む」こともできますが、プロはそれができません。
たとえば今はイギリスのEU離脱で日経平均株価も下落するなど、市況はよいとは言えません。アマチュアは「今は投資しない」という判断ができますが、プロは「今、この状況でどうする」を常に考えながら運用します。
どんなに考え、頑張ってもやはり運用に向かない時期はありますから、それを避けられないことはデメリットと言えます。