その「指導」は「パワハラ」です!

「これってパワハラ?」がすぐわかる時代に

「これだけパワハラが顕在化してきたことには様々な背景が絡んでいますが、大きく分けると2つの要因があると思います。

 1つ目は誰もがネットで調べることができるようになったということです。
『このようなことをされたら○○ハラスメント』といった情報を今はパソコンやスマートフォンで簡単に調べることができます。『自分がされたことはハラスメントになるんだ』と思い、腹いせもかねて会社を訴える人が増えています。
 今はSNSが発達していますから、個人が世間に情報を発信するのも容易です。

 自分の権利保護に執着するタイプは、何か自分に不利益なことがあればすぐに調べて対抗しようとします。私が今まで関わったケースではローパフォーマーが多かったです。
 労基署を通じての話し合いも希望通りの結果にならないと弁護士に相談するというように、問題を起こし続けます。

 仕事の出来や勤務態度があまりに悪いので注意をすると、それはパワハラだと人事に訴えたり、会社を退職して後に労基署に相談に行ったり、弁護士事務所に駆け込んで慰謝料を取ってやろうとします。

 このようなタイプには毅然とした対応をしつつも、記録をきちんと残しておく必要があります。問題社員は労基署等には自分の都合のいいように話をしていることがほとんどですので、会社が『事実はこうです』と提示できるようにしておくことが望ましいでしょう。

 たとえばそのような社員に対し注意、指導をしたならば、『このような指導をした』と『注意・指導書』のようなものを残しておくことが重要です。

 ほかにも別の会社で、毎朝6時に出社してくる社員が、『業務開始までの2時間は仕事しているのに残業代が支払われていない』と訴えを起こしたことがあります。
 会社はその時間はやることもそんなにないはずだし、他の社員に確認するとどうやら仕事していないようだったので、そんな早くに出社しないようにと口頭で伝えていたほか、書面でも伝えていたので、それが証拠になり訴えを退けることができたのです」

管理職も考え方を変えないと

「要因の2つ目は働き方の変化です。
 かつては多くの人が終身雇用で1つの会社にずっと勤めるのが当たり前の時代でした。
 あと5年頑張れば課長になれるというように先が見えたので社員も多少のことは我慢しました。現在は転職するのが当たり前という感覚の人が多くなっています。
 それに管理職になったら大変だからなりたくないという人や、仕事はそこそこで自分のプライベートを大事にしたいという人も多くなっています。
 時代が変化するにつれ働く人の意識が変わってきているので、今までの仕事重視型のマネジメントは効かなくなってきています。

 もちろんしっかりと働いてもらわなければ会社は困りますから、マネジメントのやり方も変えていかなければならないのです。本来仕事は理不尽なことがあって当たり前ですが、今は理不尽なことを受けたら我慢できないのです。
 どちらか一方が悪いということではなく、上司がマネジメントのやり方を考えていくとともに部下も意識を変えてお互いに歩み寄って双方にとって働きやすくしていく努力をする必要はあると思います。
 注意・指導されてパワハラと感じるのは、当事者間の信頼関係ができていないからだ、と言えます。上司と部下の間に信頼関係があれば、上司に怒られても「自分のためを思って言ってくれているんだな」と好意的に受け取ってもらえるでしょう。
 信頼関係がなければ『上司の立場を利用して嫌がらせをしてくる』と思われてしまう可能性が高くなります。


野崎大輔氏
 社員が会社を辞める理由のほとんどは人間関係だといわれています。それと同じで、パワハラと訴えられる一番の理由が、上司との人間関係です」

 パワハラの実情についてお聞きした。後半は「増え続けるパワハラの類に企業、経営者はどう対応していくか」をお話しいただいた。

 後半は19日(火)に更新予定(急なニュース等により変更する場合もございます)。

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