ヘッジファンドとは何か?④

「海外に投資」の2つの意味に注意

 なお、「海外に投資」という言葉には2つ意味があります。ヘッジファンドに興味があり、購入したい、運用でリターンを得たいと思う方は、この点をしっかり理解する必要があります。

意味1:海外の株や債券に投資をする
意味2:オフショア商品(日本で登録されていない金融商品)に投資する

 意味の1はわかりやすいです。日本にある銀行や証券会社等を通じて、海外にある会社の株や、いろいろな国の債券を購入し、値上がりしたら売却すれば儲かります。

 意味の2は少々複雑です。
 オフショアは「海外の、外国の」といった意味で、そこから転じて投資の世界では「国内の法律や規制が適用されない」という意味で使われています。何に関して法律や規制を適用しないのか? 税金です。
 オフショアの地域は収入にかかる税金(所得税、法人税)を免除、または軽減していて、「タックスヘイブン(租税回避地)」とも呼ばれます。

 タックスヘイブンは世界に50以上あるとされ、ルクセンブルグ、バミューダ諸島、ケイマン諸島、マン島、バージン諸島などが有名です。

 それらの小さな国や島は収入を得る手段が限られているため、金融特区のような税制優遇措置を提供することで資金を集めています。

 世界の富裕層が所有する金融資産のうち約30~40%がオフショアにあるとされ、また取引されています。
 オフショアでは金融資産に対して譲渡益課税や利子・配当課税がかからず、相続税・贈与税がなく、国内(地域外)で得た所得に対して所得税・法人税が課税されません。これがオフショアの最大のメリットです。

 オフショア地域では運用会社に源泉徴収等の義務がないため、その地域で登録されている金融商品に投資している投資家も、運用の途中で税金を源泉徴収されることがありません。

 そして、運用利回りがまったく同じ金融商品でも、途中で課税されないオフショア地域のほうが運用途中の資金を厚くでき、運用効果は高くなります。

 そのようなメリットがあり、秘密も守られることからこの場所ではシークレットな情報の交換、実際の取引などが活発に行われています。

 ほかにも、オフショア地域には専門家が集まっています。秋葉原などの電気街には同じようなお店が集まっているため、お客は安い、サービスがよいなど条件の良いお店を選ぶことができます。お店も選んでもらうために競争することでよりよい商品が売られるようになります。

 オフショア地域でも、専門家が集まることで競争力が高まり、よりよい商品が生み出されるという好循環が起きています。

 オフショアのメリットを以下にまとめます。

・減税・節税が図れる
・世界中の金融商品へのアクセスが可能
・資産防衛ができる
・プライバシーが守られる
・通貨への分散投資
・効率的な財産継承
・専門家が集まっているため競争力が高い

 デメリットは以下です。
・犯罪につながる、マネーロンダリングの温床と思われる、実際になることも

 その秘密主義なところはデメリットにもなり、気をつけないと「○○隠し」といった犯罪行為や、マネーロンダリング(脱税や麻薬売買など非合法に得た資金を、様々な金融機関を経由することで出所を不明にすること)に使われたりする危険もあります。

 世界中で問題になった「パナマ文書」もオフショアの地域で行われていたことでした。パナマの法律事務所がタックスヘイブンに会社を設立して資産移転や資産隠しを行う手助けをしていたとして、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が公開した膨大なファイル、それがパナマ文書です。

 パナマの大手法律事務所モサック・フォンセカのアドバイスによって設立された数々のタックスヘイブンのペーパーカンパニーが存在し、その数は20万社以上にも上ります。資料は1150万件、データ量は2.6テラバイトにも及ぶ膨大なもので、ロシアのプーチン大統領の親しい知人3人、中国の習近平国家主席、英国のキャメロン首相ら世界各国の首脳クラスの名前が出たために、世界中がその内容に驚愕しました。

 日本に関係する企業と個人は約400あり、ソフトバンクの子会社、伊藤忠商事、丸紅をはじめ、東京電力など幅広い業種の大企業の名前が出ています。

 ただし、日本のものはほとんど合法の範囲内で、日本企業はタックスヘイブンを使った何らかの商取引を広く行っているということが明らかになっています。

 楽天、セコム、UCCホールディングスなどの代表者の名前も出ていますが、ほとんどは認められる税金対策の範囲内だと見られます。他にも著名宗教法人の名前もありましたが、実は宗教法人は古くからタックスヘイブンと強いつながりもあり、決して犯罪につながるものではありません。

 ただし、アメリカ関係は詐欺などの疑いで刑事告訴された人物が36人も入っていたとされます。

 タックスヘイブンでは名義人にバンカーや法律家ら仲介者を立てて、受益者であるオーナーの名前は匿名にすることができます。また、株主も匿名にでき、犯罪収益をそこに貯めておくことが可能で、実際にいくつかの例がアメリカで起きています。元々はオフショアが麻薬取引などに利用されてきた歴史もあります。

 オフショアを活用するのは海外投資において常識となっていますが、税金をごまかそうという考えのもとで行われているものもあり、犯罪に巻き込まれないようそこは注意が必要です。

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