世界を変えるアイデアを生む4つのステップ

 インクルーシブなアイデアがひらめく4ステップとは―――。

1.高次の目的を決める
2.目的に従って材料を集める
3.材料をつなげる
4.手放して、ひらめきを生む

 たったこれだけだ。

1.高次の目的を決める
 まず「高次の目的を決める」。
 これがインクルーシブなアイデアを生み出すための第1段階だ。
 高次の目的とは、利己的でない、世界を進化させるような利他的な目的のこと。たとえば「地球環境にやさしい」「誰かを助ける」「誰かを笑顔にする」といったような、利他的でポジティブな目的を、できるだけ具体的に設定するのだ。

 起業するためのビジネスモデルのアイデアを考えたいなら、そのビジネスで、世の中の誰を、どんなふうに幸せにしたいのかを考えて、そのためのアイデアを生み出すことを目的とするわけだ。

 そもそもトレードオフとなっている問題の多くは、手段が目的化している現場で起きているはずだ。問題を解決するには、そのレベルを超えた高次の解決策でなければ、まとまることはないのである。
 
 たとえば、会社内でよくある営業とマーケティングの対立。営業はマーケティングを「現場を知らない頭でっかち」と言い、マーケティングは営業を「理論を理解できない現場主義者」と反目するわけですが、より高次の「会社の売り上げアップを目指す」目的のもとであれば協力し合えるはずだ。

 インクルーシブなアイデアは、複数の問題を一気に解決に導くためにも、高次の目的から生み出されるものであるものでなければないのである。

2.目的に従って材料を集める
 インクルーシブなアイデアを生み出すための第2段階は「目的に従って材料を集める」ことだ。
 求められているアイデアが、商品の広告企画に関するものであれば、クライアントの販売方針をもとに、その商品に関する資料はもちろん、市場の状況や、ターゲット層についての資料も集めよう。

 ただし、近年は、とくに情報が世の中にあふれかえっている時代で「情報爆発」「情報洪水」といった言葉もあるほど。 いったん情報を集め始めると、情報がなくて困るよりも、むしろ量が多すぎたり、内容が矛盾していたりして困ることのほうが多いはずだ。

 そんな状況のもとで、効率よく情報を集めるために大切なのが、やはり「目的」をリサーチのあいだも明確に意識し続けること。そうすれば、おのずと必要な情報が、効率よく取捨選択できるようになるのだ。

 また、つねに「目的」を頭の中心に据(す)えておくと、必要な情報を「引き寄せる」ことができるようになる。「目的」を意識していれば、普段なら見逃してしまうような些細な情報も、必ずあなたの目に留まる=引き寄せることができるのだ。

 素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見したりすることを「セレンディピティ」と言うが、セレンディピティとは、そのようにして意識が向くことによって、偶然ではなく必然として起きているのである。

3.材料をつなげる
 第3段階は、集めた材料をつなげてみることだ。
 そもそも、インクルーシブなアイデアは、まったく関係のないもの同士が突然、くっついて生まれるケースがほとんど。
 イギリスの作家アーサー・ケストナーが「異縁連想」と呼んだように、一見、何のつながりもないようなかけらが、異分子として結びつくことで、それまでになかったアイデアが生まれるのだ。

 あなたがこれまでの人生で「おもしろいと感じたこと」や「衝撃を受けたこと」、「感動したこと」や「興味を持ったこと」など、潜在意識のなかで眠っている材料が、新たに集めた材料と結びつけば、あなたにしかつくり出せない、オリジナリティの高いアイデアが生まれる。

 もし、あなた自身の体験から生まれたものではなかったとしても、心配はいらない。重要なのは、必ず異分野の材料とかけ合わせることなのだ。

 あなたのなかに眠っているものにしても、異分野から持ってくるものにしても、ここで当てはめる最後のカケラは、異分子でなればならない。
 関係性がないと思われていたものに、意外な共通点を見つけて、組み合わせられるかどうかが、インクルーシブなアイデアを生み出すための鍵となるのである。

4.手放して、ひらめきを生む
 最後のステップ、それが「手放す」ことだ。
 ここまできたら、インクルーシブなアイデアを生み出そう、などといった考えは完全に忘れて散歩に出かけたり、ゴルフに行ったり、温泉施設にでも足を運んだりして、ゆったりとくつろいでみよう。ようするに、いったん頭の中から、あなたがいま取り組んでいる問題を「手放す」のだ。

「そんなことしたら、これまで考えてきたことを忘れてしまうのではないか」。そう心配するかもしれない。
 しかし、ここまであなたが「考えに考えて」きたのであれば、完全に忘れ去ることはできないはずだ。なぜなら、思考にも「慣性の法則」が働いているからだ。1日や2日程度、頭から切り離して、完全に頭から消えてしまうのであれば、まだそこでまでしっかりと考えていなかったということなのだ。

 実際に、偉大なアイデアを生み出した科学者、作家、芸術家の多くが、異口同音に「手放す」ことで、アイデアがひらめいたと言う。

 グーグルでは、社員に「勤務時間の20%は、通常の職務を離れて(手放して)自分のやりたいことに取り組んでよい」という、独自の勤務制度「20%ルール」を定めているが、グーグルの元社員で、米ヤフーの現CEOマリッサ・メイヤー氏によると、「グーグルのプロダクトの半分は20%ルールから生まれた」ものだという。
 ほかにも、1974年にポストイットを生んだ3Mの「勤務時間中の15%は自由なアイデアを追究してよい」とした「15%プログラム」や、コンピューター製品で有名なアメリカの企業ヒューレット・パッカードの「金曜日の昼休み後、10%の時間を自由なイノベーションに当ててよい」といった制度が有名だ。

 これらに共通するのが「いま取り組んでいる仕事をいったん〝手放す〟」ということ。  
 さまざまなアイデアを世に送り出すことで成長してきたグーグルや3M、ヒューレッド・パッカードといった企業は、〝手放す〟ことがアイデアに繋がるのを、経験的に知っているのだ。

あなたもアイデア体質になれる!

 一度インクルーシブなアイデアをひらめく体験をすると、コツのようなものをつかむのか、あるいは経験を重ねるたびに、脳の中のアイデア回路のようなシナプスが次第にきたえられていくのか、徐々にあなたは〝ひらめき体質〟となっていく。
 そうなればアイデアに苦しんでいたころとは、いろんなことが変わるはずだ。

 たとえば、遅れて出席した会議。ほかの出席者が「そっちを立てれば、こっちが立たない」といった議論を繰り返しているなかで、「それって、こうしたらいいんじゃない?」という、たったひと言で、一気に全員を納得させることもできるようになる。


石田章洋氏
 また、誰かの相談に乗るときも、いろんな問題を一気に解決できるアイデアを教えてあげることができるようになるだろう。

 長年、対立を続けてこじれてしまった人間関係を、きれいに修復するアイデアが浮かぶかもしれない。

 ほかにも、これまでになかったビジネスモデルで起業するためのアイデアが、スーッと降りてくるかもしれない。

 インクルージョン思考を身につければ、あなたもそうしたアイデア体質になれるのだ。

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