日本人の社長より高給取りも
ブルームバーグが「日本の役員報酬ランキング」を発表した。その結果が興味深い。昨年の日本の会社の高額報酬役員のほとんどが、日本人ではないというものだ。
デピント氏の報酬はセブン&アイ・ホールディングスを退任した鈴木敏文前会長兼CEOの16年2月期の役員報酬(東京商工リサーチによると2億8200万円)の7.7倍だ。
日立製作所の米州総代表、ジョン・ドメ執行役常務の報酬は9億円。東原敏昭社長の役員報酬は同じく東京商工リサーチ調べで1億3600万円。ドメ氏の報酬は社長の6.6倍だ。
トヨタの豊田章男社長の役員報酬は3億5100万円で、副社長ディディエ・ルロワ氏の報酬額は6億9600万円なので豊田社長の2倍近い。
日本出身の最上位は産業用ロボットなどをつくるファナックのCEO、稲葉善治氏の6億9000万円だった。もう1人の日本人はソニーの平井一夫代表執行役社長兼CEOだ。
日本人の役員があまり多くの報酬を受け取っていない理由として、高額の報酬を受け取る=強欲のイメージがつくのを好まないからだ、とブルームバーグでは結論付けられている。
確かに外国人の経営者=プロスポーツチームの助っ人外国人のような印象があり、日本人であまり報酬が高いと「そんなにもらっているならもっと商品の値段を下げて」と考える消費者もいるが、外国人ならば報酬がどれほど高くても抵抗はないケースはある。
ブルームバーグの記事では、外国人は日本の伝統的な年功序列の報酬体制にとらわれないとしており、そういう面は確かにある。
ただし外国人役員の報酬が高い理由は、それだけではない。「ある程度の高額報酬を支給しないと入社してもらえない、ライバル会社に行かれてしまう」面が大きい。
アローラ氏は孫正義氏の後継者と思われていたが、先日退任した。ソフトバンクの株主総会では、彼が報酬に見合った働きをしたのかと、株主からの厳しい指摘もあったという。
役員報酬が高くて悪いのか?
外国人に限らず、高い役員報酬を支払うことはリスクヘッジでもある。景気の状況などを見ながら、必要に応じて役員報酬の額を調整するといったことも、経営には必要なことだ。役員報酬が一定以上支払われていないと、会社が余計な税金を支払うことになる場合も多い。
日本人はお金を稼ぐことも、使うことも抵抗のある人が多い。お金のことを口にするのすらはばかられる雰囲気がある。
稼ぐこと、使うことに抵抗のある人からお金は逃げていく。稼いでいる人、お金が集まる人は、お金の話を堂々とする、自信を持って支払いを受ける人だ。
富裕層の人々は、同じようなお金の価値観を持っている人たちの間では、お金の話を頻繁にしている。情報交換を活発に行い、お金に関する最新の情報を入手している。
多くの報酬を受け取ることは、若い人に夢を見せることでもある。かつて、大阪船場の商人は、店員一同で食事をする際、奉公人にこんなことを言っていたという。
「お前が食うとる魚はなんや? 鰯か。わしのは鯛や。お前も鯛が食いたきゃ稼ぐようになれ」
同じくブルームバーグが、アマゾンのジェフ・ベソス氏が世界で3位の富豪になったと報じた。ベソス氏の純資産は21日の時点で650億5000万ドル(約6兆8800億円)になるという。
「アマゾンのおかげで便利になった。生活が楽になった」という声はたくさん聞かれる。報酬とは人の“困った”を解決し“こういうものがあったらありがたい”を満たした結果受け取れるものだ。
これらの企業には「その役員報酬は高すぎる」と言われない業績を期待したい。