富裕層が熱心なものの1つに「寄付」がある。世のため人のためになり、税金の控除の対象にもなることから、寄付に熱心な人は多い。
一方で、「いい寄付先が見つからない」という声もある。寄付金が、寄付した先にどのように役立てられたかもわからないことも多いからだ。また、仲介する団体が寄付金をきちんと活用してくれているのかが不明瞭で、運営の形式に不満を抱くこともある。
そんな寄付者の不満を解決する認定NPO法人がある。「アジアで学校をつくる。日本と子どもの学びの架け橋になる」を目的としているAEFAアジア教育友好協会だ。ラオス、タイ、ベトナム東南アジアの山間部での学校づくりを支援し、12年間で221校を建設してきた。
このNPOのユニークな点は、関わる人全員に「自分も一緒にやった」と思ってもらうようにしていることだ。「寄付する」と言う人に対し「寄付するだけじゃなくて、現地に行ってみませんか?」と連れて行き、学校建設のBeforeとAfterを見てもらったり、現地の人たちと交流したりといったことも行っている。
金だけでなく口も出してもらう支援
実際に新しいアイディアを出したり行動で支援に関わることで、日常の生活や仕事では得られない充実感を得て、非常に満足する支援者も多いという。
ほかにも、「寄付者は事業運営にノータッチ」を求めることが多いなか、AEFAは「金も出し、どんどん口も出してください」と、寄付者に積極的な参加を求める。これもユニークな点だ。
「寄付してくださる方にも『自分も参加した』という実感を得られることが大切と考えています。やるからにはただお金を出すだけではなく、魂を込めたほうがいい。そのほうがはるかに満足感を得られるからです」
AEFA理事長の谷川洋氏は言う。谷川氏自身、定年を間近に控えたときに「アジアの学校建設に関われる人を探している」と会社員時代の後輩に相談を受け、話を聞き終わるやいなや「できるやつは目の前にいるよ」と関わるようになった人物だ。
子供たちが学校に行けないと、仕事にも就けないため犯罪に手を染める、麻薬の材料となるケシの栽培を行うことになるといったことが起こる。仕事がないからと村を出ていく人が増え、村の人口が減り存続も危ぶまれる事態が起こる。その状況を打破するためには、教育の普及が不可欠だったからだ。
だが、教育の継続的な形が作れていないことが多かった。
日本からの寄付により豪華な学校が建設されるも、しっかりした運営がされず、数年後には廃校になっているケースも少なからずあるという。
谷川氏は、学校を建設するだけでなく、きちんと運営がなされる形の支援を行う必要があると考えた。
谷川氏が目指したのは「維持される学校づくり」だ。そのために必要なのが、「村の人たちに『自分たちの学校だ』と思ってもらうこと」だった。
支援を決して、押しつけにはしない。「あなたの村に学校をつくらせてください」と“お願い”することから始まる。そして、村の人にも関わってもらい、アイデアを出してもらう。村の人が“自分たちでつくった、自分たちの学校だ”を思ってもらうためだ。自分たちのものだと思えば、できた学校を大事にしてくれる。