アメリカ大統領選でヘッジファンドが暗躍?

 アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルが、民主党のアメリカ大統領候補、クリントン氏へのヘッジファンド業界からの献金が4850万ドルに上ったと報じている。一方共和党のトランプ氏への献金は約1万9000ドルにとどまっているという。
 この金額を見て「ヘッジファンドはクリントン氏を全面支持」と考えるのは早計だ。トランプ氏は最近まで政治資金集めに消極的だったことや、外部の政治団体からの支援を拒否していたためだ。

 事実、トランプ氏と指名を争っていた別の共和党候補に6580万ドルを献金しているヘッジファンドの従業員もおり、トランプ氏に一本化されたことから、今後はトランプ氏への献金が増えていくと予想される。

 献金の目的は明確だ。クリントン氏、トランプ氏ともに、ヘッジファンド・マネジャーの支払う税金は少なすぎると述べており、大統領になったのちにはヘッジファンドに対し何らかの課税強化を行う可能性がある。ヘッジファンドはその動きに対して便宜を図ってもらおうという考えだ。

アメリカの選挙とヘッジファンド

 選挙とヘッジファンドは相性が悪い。日本でも、選挙時には「富裕層への課税を強化する」といった公約を掲げる政党が登場する。多くの票を集める必要がある選挙において、一番母数の多い人たちの受けがよいのは、自分たちへの課税を薄くして、金持ちへの課税を強化する、と言うことだ。
 アメリカでも、運用にある程度の資金が必要で富裕層向けの商品であるヘッジファンドはやり玉に挙げられやすい。
 ヘッジファンドが、選挙後の動きを見据えて先手を打っていると言える。

 今回の大統領選ではヘッジファンドの存在感が大きくなった。ヘッジファンドの経営者や従業員がこれまでに献金した選挙資金は1億2270万ドル(約125億円)。これは前回(2012年)の大統領選全体でヘッジファンド関係者が行った献金額の2倍を超える。
 ヘッジファンドとの相性がよいのはトランプ氏の共和党だ。

 白人の男性が中心で、南部などオールドアメリカな人たちを支持層に持ち、自由と責任を重視し、「強いアメリカ」「小さな政府」を理想とする。富裕層の支持者も多く、ヘッジファンドに対しても規制は不要と考える。

 一方クリントン氏の民主党はスパニッシュ、黒人などが支持し、国民全体の生活水準を上げることを目指す「大きな政府」の考え方だ。オバマ大統領は国民皆保険制度を推進するなど福祉にも力を入れている。ヘッジファンドに対してはもっと規制をしたほうがよいという考えを持つ。

 そもそもの性質を考えると、ヘッジファンドの献金が民主党のクリントン氏に集中しているのは不思議にも思えるが、これは「トランプヘッジ」とでも言えるアクションの結果だ。
 先日の共和党の党大会でも、トランプ氏が代表になることに対し不支持を表明した多数の共和党員が党大会を欠席するなどした。「トランプが大統領になったらアメリカはひどいことになる」と考える人は多い。

 今後差は埋まっていくだろうが、「ヘッジファンドとの相性を考えると共和党だが、実際の政治の混乱を考えるとクリントン氏に勝ってもらいたい」と考えるヘッジファンド関係者の思惑が、今回のクリントン氏への献金額の多さに現れている、と言える。

 ヘッジファンドの動きが大統領選にどのような影響を及ぼすか、また大統領選後にどのような影響があるか、注目が集まっている。

※ヘッジファンドとは何かについてはこちらのリンクにて説明。

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