お盆の旅行シーズン、「民泊」が盛んだ。
民泊とは主に外国人旅行者に、個人が宿泊場所として民間住宅の空き家を有料で貸し出す仕組みで、訪日外国人の増加に伴い宿泊施設が不足していることから、政府は民泊の活用を推進している。
日本政策投資銀行関西支店の資料によると、政府が目標として掲げる「日本全体で訪日外国人数を2020年までに2000万人とする」が達成できた場合、日本全体で約55500室の民泊客室が必要であると推計されている。
需要に対し供給が追いついていないことから、民泊は売り手市場と言える。収益物件の所有者には参入するメリットが大きい。
民泊の形態はいくつかある。
1.所有するマンションの部屋を利用する形
2.自宅の一画を開放する形
3.建物そのものをすべて貸し出す形
都内で不動産賃貸業を営む築山静香氏(仮名)は、所有し自身も居住するマンションのうちいくつかの部屋を、民泊用に提供している。女性のみの旅行者が泊まりやすいようヘアドライヤーなどの設備を充実させるなどし、ほかの部屋との料金以外の差別化を図っている。
貸主が同じマンションに住んでいるため、トラブルが発生した際も対応できる。
部屋をうまく稼働させられれば、家賃より多くの収入を得ることができる。たとえば家賃10万円で貸し出している部屋を、1泊6000円で20日稼働できれば収入は12万円となり、家賃収入よりも収入は多くなる計算だ。稼働日を増やせたり、宿泊代金を高くできればその分収入は増える。
築山氏は複数の物件で民泊を行い、月に40万〜50万円の収入を得ている。
都内のタワーマンションに住む岩水五月氏(仮名)は、居住する部屋の一画を民泊に提供している。岩水氏は海外在住期間が長く、現地ではいろいろな国の人との共同生活を送っていたといい、同じような環境に慣れている外国人旅行者が好んで利用しているという。
宿泊で入ってくる収益は、毎月の住宅ローンの繰り上げ返済に充てている。
また、その部屋を借りたいという人が現れた際は、それらの用品一式を使用できるようにしている。
「完全に民泊にしてもいいんですが、シーズンによりどうしても収入にバラつきがある。そこで、安定した家賃収入を得られることを一番にしながら、空きが出てしまったときは民泊で収入を埋めるようにしています。用品の購入費用はすでに民泊の収入で回収できました。
生活用品が部屋にあると、借主には費用面の負担が少なくなるだけでなく、内見してもらったとき、その部屋で生活するイメージがわきやすいんですね。結果的に空室もすぐに埋まります」
集客、決済はすべて代行してもらえる
そのような収益につながる民泊だが、宿泊者がいなければ意味がない。また、旅行者からの支払い等はどのように受け取っているのだろうか。
すべて代行してくれる会社がある。もっとも有名なのがAirbnb(エアビーアンドビー)だ。Airbnbのサイトに情報や宿泊条件を登録すると、宿泊希望者から予約が入る。
やりとりに割く時間がないという場合は、宿泊の決済のほか、部屋の掃除などもすべて代行してくれる会社もある。
どこまで依頼するかで手数料や作業費は変わってくるが、貸す側は何もしないで収入だけ入ってくる形もつくることができる。
宿泊者はどのような人が多いのだろうか。ヨーロッパや、最近はアジアも増えている。
年齢層は比較的若い。宿泊の費用はできるだけ抑えたい、荷物を置けて寝られさえすればいいという人と、そのためだけの場所を提供する民泊は相性がいい。
利用者もホテルではないことを理解して宿泊しているので「サービスが悪い」というクレームは起こりにくい。
ビジネスの長期出張もある。ホテルよりもキッチンなどの設備が整った住宅のほうが使い勝手がよいという需要もあるためだ。
民泊、人の家に宿泊するような旅行者は、基本的に人好きだという。現地の人と話をするのが楽しいというタイプが多い。
中国人の旅行者は「この建物いくら?」とはっきり聞いてきたりと、国民性が出る。
不動産所有者にとってはメリットの多い民泊だが、トラブルも多く発生している。次回はトラブルとその対処法について説明する。8月18日更新予定。