“肉おじさん”の教える本当にうまい肉①

 肉好きの間で有名な店がある。日本最大級の肉イベント「肉フェス」で4回連続総合優勝を果たした「格之進」だ。
「熟成肉」の名前を一躍有名にした店としても知られている。「肉おじさん」と呼ばれている格之進の千葉祐士社長に、「うまい肉」とはどういうものかを聞いた。

熟成しなくてもおいしいお肉もある

「お肉のおいしさは、5つのポイントの総合評価が高いことと私は考えています。
①うまみ②甘み③香り④やわらかさ⑤余韻 この5つです。
 うまみが強く、甘みがあり、『和牛香』と言われるすき焼きの時に出るような蟲惑的な甘い香りがし、舌触りのよい柔らかさで、味わいが口の中にいつまでも残る、この5つがバランスよく存在することです。

 この5つの力をさらに高めるのが“熟成”です。熟成とは何か、簡単に言うと『肉を一定期間ある条件の整った環境に置き、自己消化酵素の働きを応用しお肉のおいしさを引き出す』ことです。

 熟成にもいろいろな方法があり、お肉に適した熟成方法を選ぶことで、そのお肉がもっともおいしくなるようにしています。


格之進社長の千葉祐士氏
 最近では熟成肉がブームになり、熟成されたお肉=本当においしい肉というイメージを持たれることも多くなりましたが、熟成とは肉をおいしくするための手段に過ぎません。

 熟成しなくても、おいしいお肉も存在します。そのようなお肉は、熟成せず調理して召し上がるのがよいと思います。

 私は、熟成したほうがおいしくなるお肉だけを扱っています。お肉の流通基準で計ると評価は決して高くないけれど、熟成させることにより隠されていたそのお肉本来の魅力が引き出せるようなお肉を選んでいるのです。

黒毛和牛は“国宝”

 牛肉は“一番ぜいたくな食べ物”と私は考えています。1カロリー当たりの食べ物としての製造原価が一番高いものだからです。

 なかでも、黒毛和牛はその味のきめ細やかさ、品質の高さは世界一だと思っています。特に肉質が優れていて、脂の風味もいい。赤身にまでサシが入っていて、その味わい深さはもはや日本の国宝、財産である、私はそう考えています。


黒毛和牛
 それだけのものだからこそ、真摯に向き合いたい、その高い価値を伝えたい、と思っているのです。

 私の出身地、岩手の牛肉はおいしい。岩手県は北上山地と奥羽山脈に囲まれている盆地です。
「盆地に名牛あり」といわれます。松阪、神戸など名牛の産地は盆地です。盆地は寒暖差が大きいので、その土地でとれた米や野菜は糖度が高くなり、おいしくなります。

 また水もいいところという特徴があります。おいしさを育む風土と水でつくられたお米の稲わらを食べて育つので、牛のベースになる味がおいしいのです。

 今までは『神戸牛』『松坂牛』などの『ブランド牛』が重宝されてきました。私は、これからは『牧場ブランド』が評価のポイントになると考えました。地域ではなく、どこの牧場が育てた牛だからおいしい、高値で取引される、ということです。

 それを見越して『いわて門崎丑』という牧場ブランド牛を確立することに携わり、現在では「いわて南牛」を中心とした黒毛和牛を熟成した「門崎熟成肉」を店舗ブランドとして取り組んでいます。

たどり着いた最高の調理法

 熟成肉のいちばんおすすめの調理方法は『グリル=焼くこと』です。熟成肉のおいしさのもとは『肉汁』であると私は考えています。それをいかに逃すことなく調理できるか。試行錯誤の末に生み出したのが『塊焼き』という調理法です。

 お肉を薄く切ってから焼くと、切り口からどんどん肉汁が流れ出てしまいます。大きな塊で焼くことで、肉汁を中に閉じ込めます。

 それからお肉に均等になるように熱を加えていき、肉汁を逃さずに焼いていくのです。


塊焼き
 火が通ったあとも、3~5分ほどそのまま置いておくことで、お肉の中心温度と周辺の温度の差が近づくことで、熱せられた肉汁の動きが緩やかになり、切っても肉汁が流れ出ないようになります。そのときが食べごろです」

 塊焼きを試食させてもらった。肉を噛むごとに、口の中でジューシーな肉汁が広がっていく。一切引っかかるところのない柔らかさ。肉のうまみが凝縮されている。

 千葉氏の六本木の店舗では、一関市と共催し定期的に「うまいもん!まるごといちのせきの日」というイベントを開催している。

 牛肉に限らず一関の様々な名産品を東京のイベント参加者に食べてもらい、知ってもらう取り組みだ。生産者も店で参加者と一緒にテーブルを囲む。

 この日のメニューはピーマン、トマト、とうもろこしなど一関でとれた野菜や肉をふんだんに使用したものたち。参加する人が次々一関のファンになり、応援したいと思うようになるという。


一関産の鶏肉、豚肉、牛肉。一関産の野菜を添えて
 参加者の1人は語る。「同じ“食事”でもつくり手と一緒になって食卓を囲むのは素敵ですね。普段なら“ただのトマト”で終わっていたものが“特別なトマト”になる。一関の生産者から直接こだわりや苦労、喜びを聞かせてもらえて、おいしく味わう。最高に贅沢で素敵な時間でした」

 格之進社長の千葉氏の、肉に対する思いやさらなるイベント情報などを聞いた続編はこちら
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