国税庁が、「海外投資などを行っている富裕層に係る調査事績」を発表した。
調査件数自体が平成26事務年度の448件から565件に増加し、申告漏れとされた所得の金額が60億円以上増加、追徴税額も26事務年度の25億円から43億円へと大幅に増加している。
申告漏れとされる所得の金額は26年の2336万円から2970万円へと増加し、追徴税額も560万円から756万円へとアップしている。
「課税の対象とされる所得の数が増え、課税対象の額も上がり、それに伴う追徴金も増額になっている」ということだ。
国税庁は数年前より、日本全体で富裕層が増加していると認識し、税収を増やすうえでもその財産や収入に目を光らせている。
進む海外への資産流出への監視
特にパナマ文書の問題が明るみに出てからというもの、「富裕層は海外に財産を隠して税金逃れをしている、不公平だ」というイメージが強まり、その批判をかわす上でも、富裕層への課税に関する動きを積極的に起こし、またその成果をアピールしている。
富裕層に対する調査状況は平成26事務年度の4361件から4377件に増加したのみで、その件数はほとんど変化がない。
見方を変えれば、今までやってきた調査は、これ以上伸びようがないレベルまで徹底されているということだ。
その点からも、海外投資に対する調査が100件以上も伸びている事実は注目すべき点だ。この数字はパナマ文書の発表以前のものなので、すでに国税庁は海外投資、海外への資産流出に厳しい目を向けていることがよくわかる。
今年はパナマ文書が発表されたことからも、富裕層に対する不公平なイメージは強まっている。「金持ちは税金を逃れているのに自分たちだけこんなに払うのはおかしい」と、納税に対し嫌悪感を示す人や企業も増えていく。
そのイメージを払しょくするためにも「富裕層は税金逃れなどしていない(もともとしていない、というよりもできないが)。むしろこんなにも払っている。それに、隠そうとしてもすぐに見つけるから無駄」という見せしめの意味での、富裕層の税金に関する報道が多々されるような行動を国税庁は起こしている。
この記事でも触れたように、海外投資に対する富裕層への税務調査は非常に活発だ。そしてその数も、課税対象になる金額も増えていく。
税務調査を経験したことのない多くの人は、税務調査の結果、同じようなケースでも経費になる、経費にならないといったことがあるのを知らないことがほとんどだ。
すぐに「申告漏れ=脱税」のレッテルを貼り、悪いイメージを持つ。
追徴課税と合わせてのダブルパンチだ。
富裕層は国税庁の考えや意向をよくよく理解し、行うべき対策は早急にしておくのが得策だろう。