お金持ちかは歯を見ればわかる

 富裕層がお金をかけることに「歯のケア」がある。
 収入の少ない人が歯医者に行くのは、もっぱら虫歯になったなど、歯に不調が生じたときだ。


 歯や口の中に生じた痛みなどのマイナスを取り除く、ゼロにするために歯科医に行く。
 それに対し富裕層は、歯や口の中の健康を維持するために検診を受ける。
 歯医者に行くのは、マイナスを発生させないためだ。

「デンタルIQ」という言葉がある。「歯の知識」の意味で、デンタルIQが高い人ほど、虫歯を治すといった「治療」ではなく検診や口の中の健康チェックなど「予防」に力を入れる。
 一般的に情報の豊富な都心部のほうがデンタルIQは高いとされ、その中でも富裕層は総じてデンタルIQが高い。

歯は健康の源

 なぜ富裕層は歯に意識を向けるのだろうか。それは歯が健康の土台を固める重要な役割と認識しているからだ。
 人は口から食事を取り入れ、栄養を摂取している。栄養として吸収する上で、きちんと咀嚼できていることは非常に大事だ。
 歯の維持は体の健康の維持でもある。年齢を重ねても元気な人、年齢よりも若く見える人は、例外なくよく食べる。

 食べるうえでもっとも重要なのが、歯の働きだ。
 歯がしっかり働くことで栄養を摂取し、きちんと消化・吸収できているということだ。

 これは逆に言えば、歯が悪くなると健康に大きく悪影響を与えることを意味する。
 虫歯のある人が、痛みなど苦にせずモリモリ食べるというわけにはやはりいかない。
 歯が痛いので食べることが楽しみに思えない、そしてあまり食べなくなる=摂取できる栄養が減り、健康に悪影響を与える。
 そしてさらに食べなくなり、ますます不健康に、の悪循環だ。
 
 噛む力を保つためにもっとも大切なのが「自分の歯をしっかり健康な状態にキープする」ことだ。
 現在は入れ歯など、自分の歯の代わりとなる治療や器具が多く開発されているが、東京、国分寺の滝本歯科医院の滝本竜医師によれば「総入れ歯にすると、自分の歯と比べて、噛む力が7~8割ほどダウンする」という。

 入れ歯以外にインプラントなどの治療も発展し、現在アメリカではインプラントがよいものとされているとのことだが、インプラントがどんなに進んだとしても、自分の歯との間には決定的な差があるという。

 歯は「歯根膜(しこんまく)」という膜の上に生えているため、ぬるぬるした粘膜の上に歯があるようなものだ。そのような不安定な場所の上に入れ歯を置いても、噛むときに力が入るわけがない。

 歯は歯茎の上に固定されているように思われるが、実は上下、左右に数ミクロン単位で結構動いているという。歯茎の上を動き、いろいろな大きさ、固さのものに対してしっかり噛みやすい位置に収まることで、やわらかいものはやわらかい、硬いものは硬いという感覚を持つことができている。
 それに対し、インプラントは歯茎にしっかりと固定されるので、口の中で一切動くことがない。

 どんなに技術が進歩したとしても、一番よいのは、何と言っても自分の歯が健康で力強く噛める状態を保つことだ。

富裕層に多い「歯科オタク」

 ちなみに、噛む力とは、正常であればどのくらいあるのだろうか。噛み合わせの治療を行っている安藤歯科医院の安藤正之医師によると、人がものを噛む瞬間に歯にかかる力は、女性でも60kgあるとされる。
 小さい子どもに噛まれて結構痛いと感じた経験のある人は多いだろう。噛む力は、かなり強い。食べ物を消化・吸収しやすい形にするためには、相当な力が必要なのだ。

 デンタルIQの高い富裕層には、歯に非常に強い関心を示す人が多い。以前安藤氏がホリエモンこと堀江貴文氏に会ったときのことだ。安藤氏は堀江氏を「異常な“歯科オタク”だと感じた」という。
 月に1回は歯科検診に行って自身の歯の健康をチェックしているほか、歯に関する最新の器具やグッズについて「歯科医師も知らないことがあるレベルに詳しい」という。

 また、デンタルIQの高い人ほど、歯科医師の言うことをしっかり聞く傾向にあるという。複数企業を経営するある経営者は、最初は安藤氏に対して、自分の歯に関する考え方をぶつけていたそうだが、安藤氏とじっくり話をした結果、その治療方針に賛同し、その後は話をしっかりと聞き、言われたことを必ず行う患者になったそうだ。

 富裕層には、歯の健康のみならず、見た目をきれいにする審美歯科治療も行う人が多い。歯が汚いと不衛生なイメージになるからと、ホワイトニングなども需要が多いほか、歯並びが悪いのは相手に悪い印象を与えるからと、歯列矯正も多くの人が行っている。
 歯列矯正は見た目をよくするのももちろんだが、歯並びが悪いとは口の中で歯磨きをしにくい場所を生んでいることでもある。口内にしっかり磨くことができていない不衛生な場所があると、虫歯や歯周病の原因になる。
 歯列矯正はそのリスクを減らすことでもある。

 歯の健康を保つために、歯科医院での検診等は大切だが、もっとも大切なのはやはり日頃の歯磨きだ。毛先がナイロン、もしくはナイロンよりも耐久力のあるPBT(ポリブチレンテレフタレート)の、やわらかい歯ブラシで行うのがよい。あまりやわらかすぎるものはうまく汚れが落ちない。

 歯磨きが終わった後の歯ブラシの状態にも気を配りたい。歯ブラシが濡れたままだと、細菌が発生して不衛生だという。
 家庭で使用する歯ブラシは置いておくことで自然に乾燥するが、外出先などで使用するハンディタイプのものは、使用後にふたをして鞄の中等にしまうことが多いため、濡れたままの状態になってしまっていることがある。

 歯の健康は、毎日の積み重ねの結果。日ごろから意識し、実行するようにしたい。

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