中小企業と大企業で退職金額に約1000万の差

 長年勤務した会社をこの度退職する、そして結構な額の退職金を得られる予定、そういう人もいるだろう。

 まとまったお金で何を買おうか、自宅を改修するか、不動産に投資するか、それとも長年の夢だったお店をオープンするか……と夢は膨らむ。

 光が強くなるほど、影も伸びているように、夢が膨らみ、期待も大きくなると、負の部分も生まれてくる。
 大きな額の収入があるとなると、気になるのが税金だ。退職金に対して、どのくらいの税金が課されるのか、申告はどのような形か、いつまでに納める必要があるのかなど、非常に気になるところだ。
 大切なのは状況を知り、冷静に手を打っていく戦略だ。

目次

退職金とは?

約2割の会社に退職金制度がない

 まずは「退職金」とは何かを確認しよう。
 私たちが一般的に呼ぶ「退職金」とは、社員の退職時に雇用していた企業が何らかの金銭を支払うことを定めた制度のことで、それぞれの会社が退職金規定を定めている。

 退職金というと、会社に支払いが義務付けられていて、社員は何年か勤務すれば必ずもらえるものと考えている人が多いが、実は会社に退職金の支払い義務はない。制度を整えるかどうかは、あくまでも会社の側に委ねられている。

 東京都産業労働局のまとめた「中小企業の賃金、退職金事情(平成26年版)」によると、集計企業のうち退職金について「制度あり」と回答した企業が78.9%、「制度なし」と回答した企業は20.0%だった。


東京都産業労働局「中小企業の賃金、退職金事情(平成26年版)」の発表をもとに、 ゆかしメディア編集部が作成

 厚生労働省が発表している「平成25年就労条件総合調査結果の概況」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は75.5%で、この数字は東京都の発表するものとほとんど変わらない。

 退職給付制度を取り入れている会社を企業の規模別に見ると、社員数1000人以上が93.6%、300~999人が89.4%、100~299人が82.0%、30~99人が72.0%と、企業の規模が大きいほど退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合が高くなっている。
 一時金と年金の違い等については、別の記事で詳しく説明する。

退職金の平均金額はどのくらい?

「社員の退職金は○○万円にするように」と国からお達しがあったりするわけではない。
 退職金をいくら支払うかについては、退職金制度を導入している会社がそれぞれ退職金規定を取り決めている。社員の退職があったときは、その規定に基づいて退職金を支払うこととなる。また、支払うときに経営状態がよかったら増額し、経営が苦しいときならば減額するようなことは許されない。
 そのため、計算方法を知りたければ、会社の就業規則を見るのが一番だ。

 会社が独自で退職金について定めているとはいえ、やはり相場はある。そして相場は会社の規模に大きく左右される。
 要は、中小企業か、大企業かにより、退職金の額は変わるということだ。先述の東京都産業労働局がまとめた定年時のモデル退職金(卒業後すぐに入社し、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準)は、高校卒が1219万1000円、高専・短大卒が1234万5000円、大学卒が1383万9000円となっている。

 経団連と東京経営者協会が、経団連企業会員および東京経営者協会会員企業1910社を調査しまとめた「2014年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」によると、「管理・事務・技術労働者」の60歳・総合職で高校卒が2154万9000円、大学卒が2357万7000円となっている。
 経団連の会員になるような上場企業クラスの社員のほうが、定年時の退職金の額は1000万円近く多い。


東京都産業労働局「中小企業の賃金、退職金事情(平成26年版)」と、 経団連と東京経営者協会「2014年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」の発表をもとに、 ゆかしメディア編集部が作成

 退職金に対し発生する税金等については、別の記事で詳しく説明する。

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