サウジアラビアのサルマン国王が来日し、その動向に注目が集まっている。
産油量世界一のサウジアラビアの王、文字通り「石油王」となればオイルマネーにモノを言わせたケタの違う買い物ぶりのイメージがあるが、現状はかなり異なっている。
まず、サウジアラビアは現在かなりの財政難だ。国家財政は巨額の赤字を計上、ウォール・ストリート・ジャーナルやロイターの報じたところによると、2014年8月に7460億ドルあったサウジの外貨準備高は2016年10月末時点で5359億ドルまで減少している。
原因はほぼ唯一の産業である原油の価格下落だ。アメリカなどほかの産油国が勢力を伸ばしているほか、シェールガスなど石油に代わるエネルギーも技術革新が進んでいる。
OPEC(石油輸出国機構)が減産で同意するなど、石油価格維持のための努力は行っているが、減産に合わせてシェールガスが増産したためその効果はすでに薄い。現在、原油価格は50ドル前後で、サウジなど産油国にしてみればもっと値上がりしてほしいところだろう。
なお、日本でも航空会社が燃油サーチャージを料金に加えるようになったが、それは原油価格が上がったのではなく、ここ最近の円安ドル高が理由だ。
サウジアラビアは今までオイルマネーで充分に潤っていたため、国民の生活は非常に恵まれていた。政府からの様々な社会インフラの提供、王立の病院や学校や福祉関係は無料だった。
それが、生活のいろいろな面で支払いが必要になった。それまで無料だった様々なインフラ費用も、徴収されるようになったのだ。
インターネットの接続環境も国営の通信会社から繋ぎ放題のプランが撤廃され、使ったデータ分だけ支払い、という形に切り替わるなどの不自由が生じている。
財政難で様々な公共政策、投資はストップ、サウジアラビアは石油頼みでは国が行き詰まることに危機感を覚え、「石油に頼らない国づくり」に方針転換、そのための外交に力を入れている。
昨年のサルマン副皇太子の来日、今回の国王来日は、外交のうえで日本を重要な存在と認識してのものだ。
13日夜、安倍総理大臣とサルマン国王は会談を行った。
両国の関係は戦略的パートナーであり、日本はサウジアラビアの、石油生産に依存しない「脱石油」に向けた経済改革を支援するとし、投資や技術協力を推進する方針を確認、その後両国の具体的な協力のあり方を示した覚書「日・サウジ・ビジョン2030」の署名式が行われた。
サウジアラビアが現在厳しい財政状況ゆえ、爆買いに期待した秋葉原などの日本の外国人向け店舗はとんだ肩すかしとなった。
特に今回の来日目的は明確に外交であり、さらに関係者によると国王は公務と休暇をはっきり分けるタイプとのこと。なおのこと豪遊とは無縁そうだ。