気軽に行える仕組みが確立されたことで、幅広い年齢層に定着した「ふるさと納税」
平成27年度は約1653億円がふるさと納税により全国の自治体に寄附された。総務省の発表によると、件数は約726万件で、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」の過去のデータ等から試算すると、この数は納税者人口の3%程度と想像できる。
平成28年度はより多くのふるさと納税が行われ、地方にお金が流れたと考えられる。
1つは「高すぎる還元率」だ。
寄附額に応じて返礼品がもらえるのはすっかり当たり前になったが、各自治体による寄付金集めが過熱し、寄附額を超えるくらいの返礼品を提供するところも増えてきた。
総務省は以前より、あまりにも高すぎる返礼品は控えるよう通達してきた。この度、返礼品の額は寄附金額の3割程度に抑えるよう改めて通知が出された。
4月はふるさと納税の返礼品切り替えの時期。いくつかの自治体の返礼品を見ると、「10万円の寄附で3万円相当のサービス」というように、総務省の通達に従う形に変更したとみられる自治体がある。
また、ふるさと納税が普及した結果、横浜市や世田谷区を中心に、大幅な税収減に見舞われた事態も起きている。本来ならば納められるはずの税金が、ふるさと納税で他県の自治体に行ってしまうためだ。
元々税収の多かった地域からの批判的な声は上がっているが、ふるさと納税自体は今後ますます普及しても、制度が廃止されることはないと考えられている。
総務省のデータによると、ふるさと納税により控除されるはずだが控除されていない分が、全体の32%にも及ぶからだ。
手続きを忘れたのか、敢えて手続きしていないかはわからないが、本来ならば受けられる税金面の優遇を、受けていない人がたくさんいる。
つまり、国にしてみればふるさと納税が活発になっても税収はこれまでと変わらない、むしろ申告漏れで増える上に地域に回るお金も生まれるということだ。
国の本音は「もっと多くの人がふるさと納税をし、そして手続きを忘れてほしい」だろう。
登場する新たな取り組み
自治体間の過当競争を経て、ふるさと納税は、新たな形を模索し始めた。返礼品でそこまで差をつけられないぶん、その地域に愛着を持ってもらうような取り組みを始めている。
返礼品ではなく、自治体が中心となって行っている事業への資金をふるさと納税で募るような形だ。
たとえば岐阜県飛騨市では、廃線を利用したレールマウンテンバイクのコース整備のための資金をクラウドファンディングで募集していたり、広島県神石高原町では犬の殺処分をゼロにするための活動資金を、ふるさと納税で寄附できる。
ガバメントクラウドファンディングふるさとチョイス
ふるさと納税を「震災への寄附」として行う動きも盛んになった。福島県南相馬市へのふるさと納税は、ファッションブランド等と提携し様々な商品がもらえるようになっている。
南相馬市は原発事故に伴う風評被害等により、他の自治体のような返礼品が用意できないことから、理念に共感する企業から格安で商品を提供してもらい、寄附者へのお礼の品として渡す。
ドンペリがもらえる、新たな被災地支援の形
単なる商品を受け取るのではなく、その地域に愛着を持ってもらう、自分の寄附したお金を役立ててもらう。そのように形にも多様性が生まれている。
4月は返礼品が切り替わる時期で「先着○○名限定」といった返礼品も多々手に入るため、今が寄附のチャンスでもある。