訪日外国人観光客数が過去最高に

 観光庁は19日、訪日外国人消費動向調査 平成29年1-3月期結果を発表した。

 その発表によると、平成29年1~3月期の訪日外国人旅行者数は654万人と過去最高、政府が掲げる「年間2000万人の訪日外国人旅行者」は昨年達成され、その後も月間200万人ペースを保っている。

 政府が掲げる「訪日外国人旅行者数年間4000万人」それに向けた現状と課題を追った。

数は増えたが鈍った消費。進む多様化

 訪日外国人旅行者の消費額は9679億円で、前年同期(9,305億円)に比べ4.0%増加。
 一方で訪日外国人1人当たりの旅行支出は14万8066円で、前年同期(16万1743円)に比べ8.5%減少。
 この理由ははっきりしていて、中国人観光客による「爆買い」が中国政府の関税強化などにより収まったことだ。

 それでも中国人観光客の支出額は大きく、1人あたりの平均支出額22万5000円はスペイン、オーストラリアに次いで3位だ。
 スペインは訪日者数が前年比マイナス8.7%と減少しているにもかかわらず、1人あたりの旅行支出額が大きく増えているところが興味深い。

 スペイン、オーストラリアの支出額が大きいのは、宿泊料金が高いのが一番の理由だ。オーストラリアの1人あたりの平均宿泊料金は9万4263円、スペインは8万6747円と双璧をなす。


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 娯楽サービス費が一番高いのがオーストラリアで、買い物代が一番高いのが中国だ。

 娯楽サービス費の高いオーストラリア人に人気なのが、スキーだ。多くのオーストラリア人観光客が、成田を経由して北海道に行き、スキーを楽しむ。主に西洋人のほうが長く滞在し、日本のいろいろなところを訪れる傾向がある。

 訪日外国人は「ジャパンレールパス」というJRグループ6社が共同して提供する、新幹線を含む日本中の鉄道に自由に乗り降りできるチケットを使用可能で、外国人旅行者はリーズナブルに国内を移動できる。
 そのため、交通費はあまりかけていない。

 かつては日本への玄関は成田空港が中心だったが、最近では関西国際空港の発着も増えているほか、韓国のインチョン国際空港をハブにして来日、離日する外国人も多いため、成田を拠点にしないケースも増えた。
 成田で来日、東京を観光してから京都や大阪、広島や金沢なども訪れたのち関空で離日、そんなルートを組む旅行者がたくさんいる。

 前年に比べ、大きく旅行者数を増やしているのがインドネシア、ベトナム、韓国、ロシアで、インドネシアは前年比45.7%とその後は著しい。同じくマレーシアも数で10万人超えと顕著な伸びを示している。

 インドネシアやマレーシアなど、イスラム教徒(ムスリム)の国からの来日が増えていることから、ムスリム向けの対応をしている店舗や施設も増えてきた。
 アルコールや豚肉など、イスラム教が禁じている食材を使用しない「ハラール」しか口にできないムスリムも多いことから、訪日ムスリムが増えていることをチャンスととらえ、ハラールの認証を獲得した料理を提供する店舗も増えている。

 なお、イスラム教=サウジアラビアなどアラブ系の国々の宗教というイメージを持つ人も多いが、現在最も多くのムスリムがいるのはインドネシアなど東南アジアの国々で、人口の伸びとともに経済成長にも期待が高まる。

 イスラム教の規律がどこまで守られるかも国により考え方が異なり、飲酒を認めているイスラム教国もある。
 設備なども整い切らない日本では完全なハラール対応ができないと割り切り、禁じられている食材を使用さえしなければいいと考えるムスリムや、旅行中であれば酒を飲んでもいい、豚肉を食べても構わないという独自の考え方をする人もいるという。
 厳しい掟を当事者のルールでゆるく適用する分には構わないが、日本企業もしばしば知らずしてイスラム教の掟に抵触する行為をしたとして問題になることがあるので、提供する側は細心の注意を払いたい。

足りない宿泊施設、進まない解決策

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