プレミアムフライデーを定着させるためには?

「その通り」と、逆の意味で大いに話題になった「話題にもならなくなったプレミアムフライデー」
 一方で「『意味がない』と切り捨てるのではなく、働き方について一石を投じたことに意味がある」という、まるで禅問答のような声もいくつかあった。

「日本人には無理」などと切り捨てることは稚拙だ。後述するが以前よりプレミアムフライデーに近いものを採用し、成功している会社も存在する。
では、果たしてどのような形であれば働き方改革は成功するのかを、建設的に考えてみたい。

日本人も本当は早く帰れる

 最初に、なぜ多くの会社で社員が早く帰れないのかを確認する必要がある。主な理由は以下となる。

1.売上が足りないため、営業等を行っていく時間を長くせざるを得ない
2.生産性が低く、仕事が終わらない
3.偉い人が会社にいるため帰りづらい

 だいたいこの3つではないだろうか。
 そして1については、申し訳ないがそもそものビジネスモデルによる部分が大きい問題のため、社員の働き方を変える程度で解決しようと考えてはいけない。組織やビジネスの構造そのものを見直したほうがいい。
 これは働き方改革ではない。組織改革だ。そのため本記事では1については言及しない。

 2について、日本の労働生産性の低さは、再三指摘されている。フランスや、お世辞にも一生懸命働いているように見えないイタリアよりも低い。
そんなにも低いのはなぜだろうか。

 その大きな理由が「急ぎ帰る必要がない。むしろ帰りたくない」人がたくさんいることにある。
 イタリア人などは労働が嫌いで、宗教的に「労働とは罰」と考えている人も多い。だからこそ「さっさと終わらせて遊びに行こう」という姿勢が労働生産性を上げているとも言える。

 ある日の夕方、とある会社で、台風が近づいていて遅くまでいては帰りの電車が止まってしまうかもしれない、という事態が起きた。
 長時間労働が常態化していたその会社だが、そこからは早かった。全員がキビキビと動き、速やかにその日に必要な手続きを進め、上司は決裁していく。その結果、台風が来る前の定時で全員が退社することができたのだ。

 多くの人が、帰ろうと思えば帰れる。だが帰らない。それが長時間労働を招いていた大きな原因だ。
 かつては会社に長くいて、ダラダラ働いているほうが残業代をもらえて稼ぎがよくなった時代があった。机に長く座っている社員を「夜遅くまで一生懸命働いている。いい社員だ」と評価する経営者もいた。

 時代は変わり、残業について厳しくなった。サービス残業は違法であるという認識もかなり普及し、厳しく取り締まる風潮になってきている。
 だがまだ根本的に意識が変わったとは言えない。

 加えて、日本は治安がよいため、遅い時間でも帰りやすいこと、これも長時間労働を招く要因になっているという。
 確かに、夜道を歩いていれば強盗に狙われるような国や地域ならば、人は何が何でも早く帰るだろう。

 いくつか調査を行ってわかったのは、「上司が会社に残っていると心情として先に帰りづらい」という声の多さだ。
 そして上司も、長く会社にいるのが当たり前の時代を経ていて今さら働き方を変えられなかったり、早く帰っても家族に煙たがられるといった理由で早く帰ろうとしない。そしてそれが部下の早期退社に悪影響を与えている。

 家庭のある人だけでなく、単身者も同様だ。「帰ってもすることがない」という理由で、会社が早期帰宅を促しても腰が重い人が多い。
 働き方改革、「敵は内にあり」なのだ。

 はっきり言って、この抵抗勢力を動かすのは大変な労力であり、それが動かない結果が現時点のプレミアムフライデーの失敗であった。


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 日本人に働き方改革は無理なのか? 決してそんなことはない。日本でも、外資系企業の日本支社などでは、プレミアムフライデー導入のはるか以前から「TGIFデー」とし、金曜日は自分の裁量で好きな時間に帰れる制度を取り入れているところもある(名称は会社により異なる)。
「プレミアムフライデーは意味がない」ではない。導入し、定着しているところもすでにあるのだ。
 ただし、それも「早く帰ることにメリットがあり、遅く帰ることにデメリットがある」からだ。

 生産性が特に重視される外資系企業などでは、いつまでも会社にいるような人は無能のレッテルが貼られ、給料や昇格に大きなマイナスになったり、リストラの対象とされることも多い。早く帰ることは社内に対するアピールでもある。だから社員は早く帰る。

政府が音頭をとるなら思い切って

 現状をいろいろ見てきたが、日本人の働き方を変えるうえでどうしたらよいか? 以下のような内容がよいのではないかと考える。

「月末金曜日の15時から休み」など中途半端な形にせず、「月のどこかの金曜日を1日休み」にする

 早く帰りたくない社員が多くいて、その人たちが早期退社に悪影響を及ぼしているのならば、最初から出社しない形にすればよい。
「仕事を休みに持ち込みたくないので、どんなに遅くなっても仕事は必ず金曜日中に終わらせる」という人は多い。
 翌日にわざわざ出社するくらいならば、その日のうちに終わらせたい人は多いのだ。

「家に帰ってもすることがない」という人も、だからといってわざわざ休みの日に出社したい人は少数で、それでも会社に行きたい人は本人も会社も休日出勤扱いにすればよい。

 プレミアムフライデーの効果として、金曜日の午後から旅行に行く人の様子を取り上げていたメディアもあった。
 政府のプレミアムフライデーの目的として、働き方改革と同様に、消費の活性化もある。
「金曜日15時から旅行に行く」よりも、「金曜日の朝からまるまる3日間旅行に行く」のほうが、消費する金額が大きくなるのは明白だ。
 ならば消費がより活性化される方法を採用したほうがいい。

「休みが1日増えて仕事は大丈夫なのか?」という声もあるかもしれないが、日本は元々「日本人は休みすぎ」といわれるくらい祝日が多い。
 山の日のような、新たな祝日も制定されている。1日増えるくらい大した問題ではない。

 仕事の計画を立てるときも「この日は祝日だから1日前倒して~」というように、祝日の存在を見越して仕事をしていく。まともな仕事人ならば、「祝日があったのでできなかった」などと言い訳をする人はいない。

 大切なのは、開始当初は物珍しさだけが注目を集めて、いつの間にか消えていっているような事態を避けることだ。
 そのためには継続して行っていけることが重要である。継続できるために大切なのは「無理がない」ことだ。

 その点、やはり月末の金曜日を休みにするのは少々無理がある。月初も数字の制定等があり忙しい業界が多い。

 そうなると、毎月中旬あたりの金曜日が休みやすいのではないだろうか。

 6月は祝日が存在しない。ゴールデンウィークも終わり、梅雨の時期に入り、仕事のモチベーションが下がっている人も多い。

 この月の中旬、16日や23日あたりを「プレミアムフライデーで休みましょう」と言ったならば、多くの人から支持される制度になるのではないかと考えるが、いかがだろうか。

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