ガンダムが30年ヒットした秘密1(富野由悠季監督)

手塚治虫氏を否定

 まず、30年前に初めて見たガンダムの感覚。読者の皆さんは思い出すことができるだろうか。言葉にはならないが、これまでの日本のアニメにはない「何か」を感じ取ったのではないだろうか。日本の漫画界の父と言えば、やはり故・手塚治虫氏。その手塚氏のアニメ製作会社「虫プロダクション」に、富野由悠季氏は籍を置いた。原点はここにあった。

 「別に手塚先生のファンだったわけではなく、大学を出他に就職先がなく拾ってくれたからです。虫プロは当時、動かない絵で20分くらいの番組を作っていたのです。ディズニー映画はなぜ動くのか? そんな所でしか働けないという自分を情けないと思うこともありましたね」

 ディズニー映画は日本のアニメにはない多彩な動きをする。 まだまだ日本のアニメの黎明期でもあり、世界には程遠いと感じていた。やがて富野氏にもストーリーを決定する権利を得た。仕事をするにあたり、児童文学書のハウツー本を読み込んだという。そこで得たものがあった。


富野由悠季氏
 「その子にとって大事なことを、大人が全身全霊で語れば、その子供は絶対に思い出すことができる。誰の何の本かは覚えていませんが、そんなフレーズを今でも覚えています。アニメに関わるならば、うそをつくな。作家の全身全霊を掛けろといいたい」

 全身全霊を傾ける。当たり前のことかもしれないが、自分の心に火をつけた富野氏は、ロボットアニメというジャンルを選んだ。このジャンルを選ばなければ、ガンダムはこの世に生を受けることはなかった。

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