ガンダムが30年ヒットした秘密1(富野由悠季監督)

ロボットアニメは子供向けって誰が決めたの?

 これから作る作品がヒットになるかならないかは、当の本人にさえわかるはずはない。ましてや、そでが超ロングヒットになるかどうか、など予測は無理に等しい。それでも、あえて富野氏に問うてみた。

 「30周年まで人気が続いた理由がもし分かっていれば、こんなにジタバタしていません。僕は来年に向けての作品も作っていますが、わからないから成り行きでやるしかないです」

 ただし、ロボットを人型の機械、つまり「モビルスーツ」と定義したことで、従来のロボットアニメとは一線を画すことができた。ファンの中に、別物だという意識が生まれたからだ。さらに、ガンダムは敵と味方が人間同士という設定も真新しかった。

 「それまでこのジャンルの作品の敵は宇宙人でした。敵味方のキャラクターが入り乱れる物語を作るということだけでも斬新に見えたし、普通のドラマを描けました。それは、ディズニーでもやっていなかったことですから。子ども向けだからやさしい物語を作るというのではなく、戦場の物語だからこうなってしまうという物語を、アニメーションのキャラクターを使って描いただけ。動く絵は、子どもが見ても大人が見てもわかる表現手法だし、基本的に映画というものは観客の年齢を限定しないですむ媒体だと理解しています」

 ロボットは子供向け、アニメは子供向け。富野氏は、最初からそう決め付けることはなかった。10代でガンダムを見た人が、大人になってから見ても、常に新発見があるのかもしれない。さらに、人間対宇宙人というような勧善懲悪式の設定でもなく、人間対人間という戦場の人間ドラマにしたことで世代を問わず多くの人の支持を得たようだ。

 ただ一つ疑問に思うのは、30年の時を経た今となっても日本からロボットというジャンルでガンダムを超える存在が出ていないということ。ガンダムの一人勝ち。それはライバルが出てこないこの業界の寂しさを示す縮図でもあった。(つづく)

ガンダムが30年ヒットした秘密の後編はこちら

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