バロンズが、ヘッジファンドの運用成績トップ100を発表した。2014~2016年の3年間の平均リターンが高い順に順位付けしたもので、2016年の成績のみを見るとより高い運用成績を記録しているものも、下がっているものもある。
1位に輝いたのはスペイン、マドリードに拠点を置くアラントラ・アセットマネジメントのEQMCヨーロッパ・デベロップメント・キャピタル・ファンドクラスAで、リターンは26%だった。
2016年単独のリターンも26.39%と、安定した成績となっている。
アラントラの運用成績が安定していることには、明確な理由がある。
アラントラが拠点を置くマドリードを「金融の街」と思う人はいないだろう。
そのイメージよりも、マドリードには様々なメリットがある。生活コストは安く、気候は温暖だ。スペインの首都であることから人の往来が盛んで、ヨーロッパの主要都市へ簡単に、安い航空料金で行くことができる。そしてなによりヨーロッパの強気相場を予想するには最適な場所だという。
アラントラの投資手法は非常にユニークで、同社のCEO、ハコボ・ランサ氏は「我々は『投資のデパート』は目指さない」と言っている。むしろ「ニッチな分野でトップの企業に投資」がそのスタイルだ。具体的には「洗車システム」「三脚カメラ」「コンベアーベルト」「ポリマー技術」といったものを扱う会社たちだ。ニッチな分野の、パイは小さいが当たればライバルも少なく制覇できる分野でリターンを出していく。
アラントラは「アクティブ投資」という言葉も好まない。「我々はヘッジファンドだと思っていない」と語る同社は、レバレッジも空売りもしない。行うのはニッチな会社の株の買い持ちだけだ。
安定性は高く、35の投資のうち、損失は4つだけだという。
「種」を見つけて大きく育てる
限られた分野の限られた会社に投資するため、投資先の選定はものすごく慎重だ。彼らはまず、検討する会社に対し、ごく少額の投資からスタートする。それを同社は「種」と呼ぶ。
その種を、12~18カ月の長期間保有する。その間の業績をチェックしているほか、企業理念と実際の行動にブレがないかなどをチェックするのだ。
種の段階で株価が下落してしまうならば、手放すこともある。だが一度目を付けた会社だ。売って終わりとも限らない。さらに下がっても上昇の気配が感じられたならば、買い戻すこともある。
アラントラは、なぜニッチな会社に目をつけるのか? それは、それらの会社が「ライバルに真似できない技術を持っている」からだ。ドイツの洗車機メーカーなども、その製品は「スペシャル」ほかの会社には作れないものだったという。
その会社はヨーロッパすべてのシェアを獲得できるくらいの力がありながら、セールスがなっていない、そもそも売るよりも機械のリリースで儲ける形をとっていた。
アラントラは、経営者の交代のタイミングで、手数料ではなく販売することで儲かる形を構築することを支援。そのメーカーは業績を拡大し、株価を20%アップさせた。
アラントラが投資するのは、製品はこだわりを持って作っている、ほかに真似できないものだが、市場に連動した動きを苦手としている会社だ。職人気質の会社たちと言ってもよいかもしれない。
それらの会社を支援し、業績アップさせる。それによりリターンを得る。
バロンズが1位に選ぶもっとも安定した運用を行う会社には、それだけの理由がある。