モノ言う株主、世界的長寿企業の改革に乗り出す

「物言う株主」として有名なヘッジファンドマネジャー、ダニエル・ローブ氏のサード・ポイントが、スイスの食品大手ネスレの株式を35億ドル(約3900億円)相当取得したと、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

 サード・ポイントのネスレ株式保有比率は約1.25%に達し、今回の出資は、サード・ポイントにとって上場企業に対するものとしては過去最大となる。同ヘッジファンドは、ネスレに対し業績拡大への圧力を高めている。

 同ヘッジファンドは発表文で「ネスレのポジションは消費財業界でベストなことは間違いないが、同社の株価は3年、5年、10年の総株主リターンで見ると、欧米における大半の消費財メーカーのそれに比べ著しく低い」と述べた。
 発表文では「ネスレは旧式のやり方にとらわれている」とも言っている。

 サード・ポイントは株を買った企業に変化を迫ることで知られている。その鋭い分析力で会社の問題点を見抜き、経営の改善案を提案していく。
 ローブ氏は、成果をあげられていない経営者に対しては歯に衣着せぬ“口撃”をする。

 そのため、株を買われた会社の経営陣からはまず煙たがられるが、彼の的確な分析と建設的な提案はやがて取り入れられ、業績をアップさせていく。
 その数々の実績から「ダニエル・ローブが株を買った」という情報が広まるだけで、その会社の株価がアップすることもしょっちゅうだ。

 ローブ氏は数年前、アクティビスト株主にして取締役会メンバーとして、アメリカのヤフーの経営改革にも関与した。
 ヤフーはすでにインターネットに関して老舗企業と言える域に達していたが、だからこそライバル企業や新興の会社に差をつけられていたところもある。ローブはその点に切り込み、トップを更迭するなど経営を革新した。
 日本株にも興味があり、過去にはソフトバンク、ソニー、スズキ、IHIなどの企業の株を購入し、ヤフー同様経営に関与しているものもある。

 なお、ネスレと聞くとほとんどの日本人がコーヒーの「ネスカフェ」とチョコレート菓子の「キットカット」を知っているくらいだが、ネスレはコーヒーや菓子だけでなく、ミネラルウォーターや冷凍食品、ペットフードなど約2000のブランドを持ち、189もの国や地域でビジネスを展開している。

 2016年には150周年を迎えた長寿企業で、赤字は創業以来1度だけ、常に右肩上がりの成長を果たしてきた超優良企業でもある。

 ただし、ここ4年連続で業績目標を達成できず、今年2月には長期の売上高拡大目標を取り下げ、マーク・シュナイダー最高経営責任者(CEO)は米国菓子事業の売却も検討すると明らかにした。苦戦している冷凍食品事業についても売却を検討しているとされる。

 日本でも長寿企業がそれまでのやり方にとらわれて時代に取り残されることはよくあるが、それぞれの時代に受け入れられ、生き残ってきた長い歴史を持つそのやり方にサード・ポイントという強烈な改革の旗手が切り込んでいく。

 改革には痛みも伴うが、ローブ氏がテコ入れをスタートさせる優良老舗企業ネスレの復活はすぐそこだろう。

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