多くの投資家がその行方と価格に注目しているビットコイン。最近のヘッジファンドはビットコインを初めとする仮想通貨にも進出してきている。
北朝鮮情勢を受けて不安が広がり、ヘッジファンドによる仮想通貨の買いが進んでいることも、ここ最近の価格上昇の一因になっているとされている。
「ヘッジファンドたちの今の最大の関心はビットコインだ」。アメリカ系証券会社の幹部はそう口にするほどだ。
世界の株や債券、為替の売買を手掛けてきたあるヘッジファンドは、6月に仮想通貨の投資を開始。7月までに運用資産の数%をビットコインを含む仮想通貨に投じたという。
ヘッジファンドの間で現在仮想通貨への投資法として流行っているのが「1%投資」だ。資産の1%を投じた場合、仮に丸ごと失っても大きな損失にならないが、何倍にもなればリターンは大きい。ヘッジファンドのスケールメリットを活かした投資の形だ。
ビットコインに関して、肯定的なヘッジファンドマネジャーも、否定的なタイプもいる。
彼らの考えをまとめてみる。
もっと大きく仮想通貨に賭けているヘッジファンドマネジャーが、ソフトバンクグループが買収することで合意したアメリカのファンド、フォートレス・インベストメント・グループの元マクロマネジャー、マイク・ノボグラーツ氏だ。彼は運用資産の1割をビットコインに投じたと、ブルームバーグが報じている。
ノボグラーツ氏は「ビットコインの王様」となることを目指しているという。
ノボグラーツ氏は仮想通貨およびその関連企業、新規仮想通貨公開(ICO)に投資するヘッジファンド「ギャラクシー・デジタル・アセッツ・ファンド」(仮称)を開始する。当初の投資額は5億ドル前後で、自己資金1億5000万ドルを投じるほか、来年1月までにファミリーオフィスや資金力のある個人投資家、ヘッジファンド運用者から3億5000万ドルを集める計画だという。
このファンドは仮想通貨の投資ファンドとして最大規模となる見込みだ。
ノボグラーツ氏はハイリスク・ハイリターンなものを好むヘッジファンドマネジャーで、ビットコインに対し「すぐに金持ちになれる方法だ」「3000ドルで買って5000ドルで売ってやる」と息巻く。
彼自身は2年前に運用に失敗し巨額の損失を生み、市場から退場していた。その後は大きなヒットに恵まれておらず、仮想通貨で復活に賭ける。市場関係者は「ノボグラーツ氏はハイリスクな賭けを好むことに関しては変わっていない」と語る。
仮想通貨に対し否定的なスタンスのファンドマネジャーは、どう考えているのだろうか。
JPMorganのダイモンCEOはビットコインを「詐欺だ」とコメントし、この発言は市場に大きなインパクトを与えた。
世界一のヘッジファンド、ブリッジウォーターの創業者、レイ・ダリオ氏はCNBCのインタビューでビットコインについて聞かれ、詐欺とは言っていないものの「ビットコインは非常に投機的な市場であり、バブルだ」と語り、「金と異なり、富を蓄えておく場としてふさわしくない」と述べている。
ダリオ氏はそのように語る根拠として、ビットコインが流通に比べて実際の取引が行われている量が著しく少ないことを挙げ「まさに投機だ」と語る。
危ない橋を渡らない運用スタイルで世界一のヘッジファンドを築いたダリオ氏にとって、仮想通貨はもっとも忌み嫌うものなのかもしれない。
ヘッジファンドマネジャーの運用スタイルにより、仮想通貨に対する見方は大きく異なる。自国の通貨が暴落した国では実際に通貨としても使われているビットコインだが、投資の対象として考えると、ハイリスクなものという評価だ。
その価値が固まるまでは、まだ時間がかかりそうだ。