東芝は19日、海外のヘッジファンドに新株を割り当て、6000億円を調達すると発表した。新株発行価格は17日終値を10%下回る水準となる。この増資が完了すれば、東芝の上場廃止は回避される。ただし、その後も上場を維持するには、9月末時点で6000億円余りに達した債務超過を来年3月までに解消する必要がある。
また、今回の新株発行により、ヘッジファンドを中心とした外国人投資家が東芝株の約3分の1を保有することになる。
この度新たに東芝の株を保有することになったヘッジファンドがどのようなところかを見てみよう。
・エフィッシモ・キャピタル・マネージメント
村上ファンドの元社員3人が設立した資産運用会社で、アメリカの基金を始めとする欧米の機関投資家が主。投資手法はイベントドリブン戦略で、企業の合併・買収、資産売却、自社株買い、非公開化などを通じた企業価値の創造を目指すとし、一部の企業に対しては経営陣への助言および重要提案も行っている。
過度な敵対的行為は避けるとしているが、その可能性は否定していない。
・セガンティ・キャピタル・マネジメント
香港のヘッジファンドで株式マルチストラテジーを主な手法とし、ブルームバーグのニュースレター、ブルームバーグブリーフ(アメリカの日付で2016年2月23日付)に掲載された、2015年のヘッジファンド運用成績ランキングは29.6%で3位。
バロンズアジアが2017年6月に発表した「ペンタトップ100ヘッジファンド」では、3年間の平均リターンが23.06%と、同じく3位に入っている。
・ハーバード・マネジメント
アメリカハーバード大学の金融資産の維持と拡大を目的として、ハーバード大学の完全持株子会社として1974年に設立された運用会社。寄付金等を基にした370億ドル近い大学基金を運用し、ハーバード大学の運営予算の35%を生み出している。同大学はアメリカの教育業界で最も資金力のあるところの1つ。
・エリオット・マネジメント
「アメリカで最も成功したヘッジファンドの1つ」といわれており、1977年の設立以来、損失を出した年も過去に2回だけで、平均してプラス約13.5%の年間リターンを達成している。
資産の保全を第一に掲げ、できるだけ高い利益率を実現することを目指す。
破産先に投資し、しっかり向き合って時間をかけ大きくしていくのが創設者ポール・シンガー氏のスタイルだ。
・キングストリート・キャピタル・マネジメント
1995年にニューヨークで運用開始。破綻企業への投資を積極的に行っている。ニューヨークのほかにロンドン、シンガポール、東京、バージニア州のシャーロッツビルにもオフィスを持ち、従業員は約200人以上を抱える。
・サーベラス・キャピタル・マネジメント
かつて西武ホールディングスを買収していたことで知られる。当初は友好的な関係を保っていたものの、同ヘッジファンドによる、西武鉄道の再上場を目的とした大規模なリストラ案を西武が拒否したのをきっかけに関係が悪化。その後サーベラスは西武鉄道株を売却し、西武鉄道は自社計画に従って再上場している。
・サード・ポイント
「モノ言う投資家」として有名なダニエル・ローブ氏が設立したヘッジファンドで、日本株にも強い関心を持ち、これまでもソフトバンク、ソニー、スズキ、IHIなどの企業の株を購入。
彼の「モノ言う株主」スタイルは、株を買われた会社の経営陣からはまず煙たがられるが、的確な分析と建設的な提案はやがて取り入れられ、業績をアップさせていく。
その実績から「ローブが株を買った」という情報が広まるだけで、その会社の株価がアップすることもしょっちゅうだ。
「特別なことがあったり、投資機会をもたらす出来事、チャンスを現実化できるようなことがあれば、それに投資していく」とローブ氏は語る。
・オアシス・マネジメント
香港のヘッジファンドで、これまで、任天堂に対しスマートフォン向けに「スーパーマリオ」などのソフトを供給するよう戦略転換を求めたり、京セラに保有するKDDI全株の売却と売却額の半分に当たる約5000億円の株主還元を要求するなどしてきた。
パナホームの二番手株主で、パナホームを完全子会社化しようとするパナソニックとの間でも対立。
東芝に対してもこれまで、子会社の東芝プラントシステムとの間におけるキャッシュ管理方法を見直すよう提言していた。
これらの顔ぶれを見ても、一筋縄ではいかない強敵ばかりだ。破綻企業への投資を成功させてきたり、経営に口を出して改善させてきたヘッジファンドも多くの株を所有した。
上場廃止は回避されても、東芝の今後は別の意味でも苦難が続く。