イングランド銀行のマーク・カーニー総裁が、「ビットコインは伝統的な基準に沿えば通貨としては失敗した」と語ったと、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
カーニー総裁は、ビットコインが価値貯蔵手段としても、物品などの購入手段としても通用しないとの考えを示している。
「伝統的な基準に沿えば」というのが、この発言の裏に潜む真意だ。
「仮想通貨は通貨になりえない」と主張するのは、伝統的な通貨の関係者がほとんどだ。価格変動が続く現状では、仮想通貨を決済手段として使えると考える伝統的な通貨の関係者はまずいない。
そしてそれは、仮想通貨肯定派の人たちも同様だ。
「誰もやっていないことを、誰よりも先にやる」と語り、ビットコインによる決済導入を目指していたLCCのピーチ・アビエーションは、平成30年3月末までとしていたビットコイン決済導入時期を白紙にした。
肯定派の人ですら、今はそのときではないのだ。
ビットコインをはじめとした仮想通貨は、決済手段として普及すると考えた人たちが環境整備を行った結果、価値が上昇した。
その結果、「仮想通貨は儲かる」と考えた投機筋を呼び込み、価格は暴騰、暴騰の結果暴落と乱高下も起こるようになり、決済手段としてはとうてい機能しなくなってしまった。
また、仮想通貨否定派の人たちも、仮想通貨を支える仕組みそのものについては、評価する動きが多い。
カーニー総裁も、仮想通貨の基幹技術「ブロックチェーン」については、金融取引を分散的に認証する方法などに有用である可能性があるとの見方を示している。
仮想通貨に使われている技術の分散型台帳(DLT)は、今後イングランド銀行が電子マネーを発行するうえで、利用できる可能性がある技術だとしている。同技術を活用することで、金融機関間で行われる取引処理の効率化に寄与すると考えているようだ。
仮想通貨に手厳しい人たちも、決して新たな技術を否定しているわけではない。手厳しい言葉が並ぶのは「これほどの技術でありながら、投機にしかなっていない現状に歯がゆいものを感じている」部分もあると推測される。
コインチェックによる仮想通貨の流出事件などを受け、仮想通貨も新たな局面を迎えつつある。
伝統的な通貨の関係者が仮想通貨を適正に評価する頃には、仮想通貨はすでに決済手段として健全に機能する社会になっていることだろう。