普段使いや商談、フォーマルな場での筆記用具として、万年筆を愛用する人は富裕層にも多い。
万年筆の専門店も多々あり、単なる筆記具を超えて、装飾品、芸術作品として万年筆を購入する人もたくさんいる。
その金額も、万年筆を使用しない人からすれば驚愕するような値段のものも多い。
万年筆の世界は「時計」に近いと言える。「正確に時を刻む」という機能では一定レベルの時計はすべてクリアしており、あとは時計に使われている装飾品やデザインなどが価格を決定し、価格も様々で、上限はない。
万年筆も一定より上であれば、個人のクセや好みはあれどどれも高品質で、あとはどのような装飾、デザインがされているかにより値段が変わる。流行に乗ったデザイン、限定生産のものなども、ヨーロッパを中心にメーカーが多々発売している。
そのように奥深い万年筆の老舗、モンブランが究極の1点モノ、2億円の万年筆を発売する。
そのラグジュアリーな価格を支えているのが、「ダイヤモンド」と「熟練の職人による複雑で繊細な装飾」だ。
写真を見ればわかるように、ペン全体に余すところなくダイヤモンドが使われている。大きなものから小さなものまで、最先端のツールでカットされたダイヤモンドが、万年筆全体にちりばめられている。
同時に、その大きなクモの装飾が目を引く。
モンブランにとってクモは特別な存在だ。元々クモはヨーロッパで古来より、「執筆」という創造行為のメタファーであり、古代ギリシャの文学を皮切りに、文芸作品に多々登場している。
クモのつくる巣はその繊細さ、幾何学模様の精緻さが美しいとされ、精緻な文学作品はしばしば「クモの巣のよう」と喩えられる。
モンブランはクモを「独特のフォルムを持つ詩的で美しい有機体」とリスペクトし、1920年代に、クモをあしらったデザインの作品を発表。その後も度々デザインに用いてきた。
ペンの素材にはAu750ホワイトゴールドを使用。そのスケルトン構造のボディとキャップは、精緻なクモの巣を細かく写し取り、すべて熟練の職人の手作業で彫刻され磨かれている。
商品名は「モンブラン ハイアーティストリー ヘリテイジ メタモルフォシス リミテッドエディション1」
「複雑きわまる彫金技法やペン先製作などの熟練のテクニックと組み合わせ、ひとつの芸術作品に仕立て上げました」とモンブランの担当者は語る。
金額は150万ユーロ、日本円にして2億円相当となる。