医師が教える疲れない人のための「脳の休め方」

 脳神経外科医で、『一生疲れない人がやっている「脳」の休め方』(実務教育出版)などの著書のある菅原道仁氏が都内でトークショーを行い、参加者からの様々な質問、悩みに答えていった。

認知症か、認知症でないかを分ける簡単な方法

 菅原氏のところには、多くの患者が来る。そのなかで多いのが、認知症に関する相談だ。


「私は認知症でしょうか?」そう聞いてくる人もたくさんいる。
 認知症かどうかについて、簡単にわかる方法があると菅原氏は言う。それは「自分で病院に来たかどうか」
 自分で来ていれば、その人は認知症ではない。「家族に連れられて来た」は認知症の可能性が高い。

 認知症とは「記憶の麻痺」のようなものだという。体が麻痺し、車いす生活の人に頑張って歩けと言う人はいないように、記憶が麻痺している人に、以前のように思い出せと言うのは無理がある。
 菅原氏は、認知症の患者に対し「ちょっと物忘れがする、記憶が苦手な状態になっていますね」というように、伝え方を工夫しているという。

「え~と、あれだ、あれ」を防ぐ方法

 年齢を重ねるごとに「思い出せない」が増えてくる、そういう経験をしたことのある人は多いだろう。
「年のせいで思い出せなくなった。名前が出てこなくなった」
 多くの人がそう考えるが、菅原氏によると、それは年齢のせいではないという。

 では原因は何なのか? 菅原氏曰く「大人は試験がない」
 どういうことか?「記憶する」と「思い出す」は別の力であり、思い出す機会が少なくなることで、その力も衰えるのだという。
「え~と、あれだ」と思うとは、「記憶はしている」ことの証明でもある。記憶から完全に抜けてしまい、まったく覚えていなければ、「え~と、あれだ」にもならない。

 大人は学校の試験のように「思い出す」を求められる機会が、学生に比べ格段に減る。仕事であれば、個人の記憶に頼るよりも、正確に記録することが大切になるゆえ、求められるタスクでなくなる故、使わなければ衰えるのだ。

「現実に気づく、認識する」ことで行動が変わる

 逆に、本当に「衰える」ものとして「筋肉量」がある。体は年齢を1つ重ねるごとに、筋肉量は1%減っていくという。
 しかし、体は衰えていても本人にその自覚はないことがほとんどだ。その結果「イメージと肉体のかい離」が起こる。
 そのわかりやすい例が「運動会で肉離れを起こすお父さん」だ。本人は走れるつもりでも、昔ほど筋肉はないため、イメージのようには動けない。その結果足がもつれて転倒したり、肉離れ、アキレス腱断裂、骨折などの重傷を負うこともある。

 菅原氏は「現実に気づく」ことの大切さを語った。
 菅原氏曰く「男性より女性のほうが長生きなのは、鏡を見るからではないか?」鏡を見るとは、現実に向き合うことだ。「自分は前より走れない」とわかっていれば、無理をして重傷を負うこともない。


左より実務教育出版の小谷俊介氏、菅原氏、ライターの小松田久美氏

「よく眠れない」を改善する3つの方法

「睡眠負債」という言葉もすっかり定着した。日頃の寝不足を、どう解消したらよいか?
 また、不眠症に関する悩みを抱える人も多い。

 睡眠に関しては個人差による部分も大きく、長い睡眠時間を必要とする人も、短くてもよい人もいる。
 菅原氏は「睡眠時間の長さに関係なく、昼間に眠くならなければ、睡眠はバッチリ取れている」と言う。
 睡眠時間が短い人でも、日中に眠くならなければ、充分に眠れていると言える。長い間寝ていても、日中に眠ければ睡眠が足りていない。

 よく寝ていても日中に眠いのは、3つの原因が考えられる。
①睡眠の質が悪い 
②寝具が合っていない 
③昼間の運動量が少ない

 寝具が合っていないせいで睡眠の質が悪くなることは、よくあるという。菅原氏は語る。「人生の4分の1は寝ているのだから、寝具には年収の4分の1くらいのお金をかけてもよいのではないか?」
 加えて、エレベーターやエスカレーターなどの設置により、すっかり自分が動かなくてよくなった現代人は、運動量が不足するという。そのため、疲れておらずぐっすり眠れないのだ。
 菅原氏は、日常生活に運動を組み込むことの大切さを語った。また、こうも言っている。「早歩きができる人は、健康長寿だ」
 早歩きも、充分な運動となる。

 最後に、それらの対策をしても日中が眠くてたまらないようであれば、菅原氏は一度スリープクリニックのような病院で診察を受けることを勧めている。

 人間、加齢とともに、よい睡眠に欠かせないホルモン、メラトニンの分泌が減るため、睡眠が浅くなっていくという。
 高齢者の起床が早くなるのは、メラトニンが不足するからだ。
「眠れない、と気にするのが、実はいちばんよくないことです。こう考えてみてはいかがでしょうか。眠れない=自由な時間が増える だと」
 そう質問に対する答えを締めくくった。

 トークショーの終わりに、話は「ストレス」に及んだ。
「みなさん“ストレスをなくしたい”とよくおっしゃるのですが、“ストレスゼロ”は無理です。また、もしできるとしても、それはよくない状態です。ストレスがないと、人間は老けてしまいます。
 宇宙空間、あそこはストレスの一切かからない場所です。重力ゼロは体へのストレスゼロを意味します。

 そうするとどうなるか? 宇宙飛行士はわずか数日の滞在でも、地球に戻ると歩けなくなってしまいます。

 ストレスをなくす必要はない。適度なストレスと、うまく向き合う。それが大切です」

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