著名株式ヘッジファンドODEY(オデイ)が年初来+40.64%のリターンを記録

急騰を見せた2017年の10月とは打って変わり、2018年10月は個人投資家にとって受難の1カ月となっている。

そんな中、年初来リターン40%プラスと、ひときわ輝かしい成績を記録しているヘッジファンドがある。

その名をODEYEuropean(オデイ・ヨーロピアン)と言い、ゆかしメディアの読者の方の中には御存じの方も多いかもしれない。


株式ロングショート戦略を採用するファンドの中でも長期の運用実績があり、1992年より実に25年近いトラックレコードを有している。

株式ロングショート戦略は「昔ながらのヘッジファンド」とでも言うべき戦略で、ファンドマネージャーが割高な株、割安な株を判断し買いと売りの両ポジションを持つ運用戦略である。多くのファンドは買い60に売り40といったような形で、やや買いに傾注した「ロングバイアス」で運用を行うが、ODEYEuropeanは機と見ればショートポジションに大きく投資比率を傾ける。

2008年から2009年にかけて世界を襲ったサブプライムショック、リーマンショック時にも+74.25%(2008年1月~2009年12月)のリターンを記録したことは、そういった運用戦略が功を奏した結果と言えるだろう。

勿論、そういった戦略を採用することにはリスクも伴う。2016年の英国EU離脱騒動の際には上記ショック時と同様にショートポジションを大きくとって運用を行った。マーケットの堅調な推移がODEYEuropeanを襲い、-33.23%(2016年6月~2017年5月)と手痛いマイナスを被った。

相場が良いからと言って必ずしも勝てるわけではないというのが株式ロングショート戦略の難しいところだが、あるデータがODEYの行く末を示唆していると見る専門家も居る。

キーワードは「イールドカーブ」だ。短期金利~長期金利をひとつなぎの曲線で繋いだ利回り曲線のこととなっており、資産運用を行っている人なら一度は目にしたことがあるだろう。

一般的な経済環境下では期間の長い金利ほど高くなる為、イールドカーブは右肩上がりになることが多い。順イールドと言われる状況である。(図1参照)


しかしながら、上記の曲線は常に同じ形をしているわけではなく、景気がピークを迎えるタイミングや、悪化していくタイミングでは異なった形状となることも見られる。

短期金利から長期金利までほぼ同じ金利水準で並ぶ「フラット」な状況や、通常とは真逆の長期金利が短期金利よりも低い「逆イールドカーブ」と呼ばれるような状況である。
(図2.3参照)



たいていの場合には上記の順イールドであることが多いものの、過去には逆イールドカーブが発生したこともある。

2000年3月末や2007年3月末には長期金利よりも短期金利のほうが高くなっていた。
前者はITバブル崩壊直前、後者はリーマンショック直前である。この逆イールドカーブは米国に限った話ではなく、日本でも起きており1989年12月末のイールドカーブも短期金利のほうが長期金利よりも低くなっている。バブルの末期に見られるような状況と言えるのかもしれない。

さて、話をODEYに戻すとしよう。
下記のグラフが米国金利の推移についてまとまっているグラフである。赤い線が短期金利、青い線が長期金利となっており、これがクロスしているポイントが上述の「逆イールドカーブ」状態になるわけだが、ODEYはクロス後1年程で非常に良い成績を収めていることが多い。

ITバブル時には運用開始していなかったものの、2001年のクロスの翌年には+13.30%、2007年のクロス後には1年で+59.81%となった。米国経済が堅調に推移していた2006年には+11%程に留まっていたとのとは対照的である。



そして今、短金利はここ10年で最も差が縮まり、「フラット化」してきている。
逆イールドカーブが現れるのも時間の問題と見る識者も少なくない。こういったタイミングでODEYの成績が上向いてきていることはただの偶然だろうか?

米国経済は「かつてないほど強く、全てが堅調である」とされている今だからこそ、ODEYのような「売り屋」にも目を配り、適切なポートフォリオを形成、維持していくことが求められているのかもしれない。

≪2018年11月7日追記≫

10月もOdeyは7.4%プラスとなり、年初来リターンを51%まで伸ばしている。


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